知識を血肉にするために必要なことは、言語化と「地図作り」!?
篠田:続いては、読んだものを血肉にするために、どうアウトプットすればいいのかについて伺いたいと思います。「どこでアウトプットするのか」「どんなポイントを意識すべきか」など。
堀内:本を読んで、面白かったところに線を引いたりしますよね。でも読み終わると98%くらいは忘却の彼方に飛んでいく。なので私の場合は、読んで感じたこと・考えたことを文章にしてFacebookによくアップしていました。
書いてみるとですね、「あれ、これじゃ意味が通じないな」みたいなことがけっこうあって。要は自分がよくわかってないから、アウトプットした文章もまとまらないんですね(笑)。で、もう一度読み返してみるとやっぱり誤解してたりして。それをなんとか人に見せられる程度の文章にすると、理解も深まってくると。
さらにもっといいのは、読んだ本について人に話すこと。講演会でお話しさせていただくときなんかに本を引用しようと思って、その本の書評を読み返して、さらにその本自体を読み返して、としてみるとですね、さらにまた誤解してたこととか、自分が理解できてなかったところとかが出てくることがあるんです。読んで、線を引いて、SNSで発信して、書評にして、人に話して、というサイクルをやるとかなり記憶が定着しますよね。
だから私、みなさんに読んでもらおうと優しい気持ちで書評を書いてるんじゃなくて、実は自分のために書評を書いてるんです。
篠田:自分の本の消化のために書いてらっしゃって、私たちはそのおこぼれをいただいているんですね(笑)。山口さんはいかがですか?
山口:堀内さんがおっしゃられた「98%忘れちゃう」っていうのは、まったくその通りだと思います。僕、「いつか読まなきゃな〜」とずっと思ってた本があって、あるとき意を決して読みはじめたんですよ。そしたら真ん中くらいまで読み進めたときに、明らかに自分の筆跡のメモ書きが残ってるのを見て、椅子から転げ落ちるほどびっくりしたことがありました(笑)。そこから「こんなことやってたらあかんぞ」と思って、面白かったところにはアンダーラインを引いたり、珠玉の一文はEvernoteに残したり、そういうことをちょこちょこやるようになりましたね。
あともうひとつ追加で話すなら、テーマを決めて“固め読み”するのがいいなぁと思ってて。たとえば、これは実体験なんですけど、リーダーシップに関する本を読んでて南極探検のアムンゼン・スコットの話が出てきて、面白そうだなぁと感じたら、今度は本多勝一さんが書いたアムンゼン・スコットについてのルポを読むんですよ。それを読んで、「局地探検ってリーダーシップのテーマとしても面白いな」と思ったら、次はシャクルトン隊のドキュメントを読んだり、エベレスト登山についての本を読んだり……というふうに広げていく。そうすると、根を張るっていうんですかね。ひとつひとつの知識が結びついて、記憶に残りやすい気がするんです。
単発で拾い読みしていくんじゃなくて、マイテーマ、マイブームをつくって、ネットワーク的に読んでいく。そうすると「局地」「探検」「リーダーシップ」といったテーマになって、知識の引き出しが整理されるんですよ。
篠田:知識が相互につながっていくんですね。
山口:そうそう。忘却を防ぐ最大の方法は、整理して自分の言葉に直して書いたり話したりすることで、もうひとつできるのが、ほかの知識と結びつけることだと思います。元から知っているものならなおさら記憶に根を張っているので、そういったものと新しい知識をくっつけると、その根でしっかり固定されるんですよね。
堀内:自分の頭の中に本の地図を作る感じですよね。
山口:そう、地図、まさにそんな感じです。
堀内:円周率を1万桁まで覚えた記憶術の世界チャンピオンが、どうやってそれを記憶したかというと、フロリダの通りの名前に番号をつけていったそうです。あの角を曲がると、こっちの上はあの数字だった、というふうに1万桁まで覚えていったとか。
篠田:全部つながりで覚えていったんですね。得た知識を血肉にするためには、自分の言葉を使って表現することはもちろん、本選びと一緒で、ただキャッチーな言葉を抜き書きするのではなく、「今の自分にとってこの本の意味ってなんだったっけ?」というポイントを押さえて書くことが大事なのかなと思いました。そうすることで、今の自分が本を通して見えてくる。“固め読み”が効果的な理由もそういうところにあるんだろうなと思いながら、お話を伺っていました。