上意下達な組織文化を変える覚悟が1on1には必要

 1on1を社内に取り入れようとする際には、主に2つのチェックポイントがあるのではないかと思います。

1. つくりたい組織文化と1on1がもたらす効果とで方向性が一致しているか
2. 実践している現場を観察してフィードバックする仕掛けを用意できるか

 1つ目は、つくりたい組織文化が1on1で期待できる効果と一致していなければ、役に立たない可能性が高いということです。

 そもそも、1on1は個々の社員の中に潜む才能や多様性からくるアイデアの種を探索する行為で、他者が関わることによってその効果を増幅させようというのが狙いです。したがって、上司のやり方や考え方が絶対といった上意下達な組織文化や、決められたゴールやプロセスどおりに正確になぞりさえすれば成果が上がるという仕事では、1on1との相性はよくないと想像します。

 つまり、1on1を導入することによってどういう人材を育てたいのか、もしくは、どういう組織をつくりたいのかを明らかにすることがまず大事です。そのうえで、1on1が目的に適った手段なのかをしっかり確認してから導入の検討を始める必要があると思います。導入する以上は、上意下達な組織文化を変えてまでやるという覚悟が必要だと思います。

 2つ目は浸透に関する話です。先ほど「1on1チェックをやっていなかったら定着しなかったかもしれない」と述べました。全社をあげて取り組もうとするなら、観察や調査を通じた結果を社員にフィードバックすることが不可欠です。効果があったとしても、本人が実感できないと意欲が続かないからです。他社の様子をお聞きすると、社内説明や研修には手間と費用をかけますが、関係者への実態調査やフィードバックには消極的な印象です。ですから、その優先順位は上げたほうがよいとお伝えするようにしています。

「ヤフーの1on1」は、導入からもうすぐ10年になろうとしています。導入時に新卒で入社した社員が部下を持つようになったり、プロジェクトのリーダーになったりするなど、いまでは上司の立場で1on1を行うケースも出てきました。いわば1on1ネイティブな管理職が増えてきたわけです。

 今後、予期せぬ効果や新たな活用が生まれてくるかもしれません。期待は膨らむばかりです。