「私」を主語にすることから、変わりだそう

塩瀬:じゃあ、締めに入ろうと思います。まずは原田さんからお願いします。

原田:これまでの越境って「起業しましょう」とか「ある程度のリスクを取らないと経験できないよね」っていう話だったんですね。でも今は、もうちょっとグラデーションがあっていいよね、という越境が出てきているのかなと思っています。どの程度なのかとか、社内と社外のどっちがいいかとか、タイミングとかは、それぞれでしょうけど。

「ちょっとずつでも何かを変えていく」ということを続けると、なんだかイキイキしていくっていうのはあるはずです。だから自分なりに、はみだせばいいんですよ。今日聞いてくれたみなさんが、明日以降「何かちょっと、やってみようかな」みたいに感じてくれたら嬉しいですね。

小沼:みなさんの中には、多分「越境したい感」満載の方もいらっしゃると思うんですよね。その気づきを仕組み化していくのも大事だなと思っています。気づきで終わりにするんじゃなくて「じゃあ次はここで会ったこの人と、こういうことをしてみよう」「勉強会を探して参加してみよう」と行動していく。そうやって少しずつ、自分のキャリアのプロセスの中に入れていくと、だんだん越境が心地よくなったりしていくんじゃないかな。楽しいと思うので、僕は結構おすすめです。

 あとはローンディールやクロスフィールズのように、「組織ぐるみの越境」を得意にしているプレイヤーを、うまく使い倒してほしいなと思います。クロスフィールズは、セクターを越えた社会課題の解決や社会の分断をつなぎ合わせるような活動を、越境のプロとして行う組織です。なので今日ピンと来た人がいたら、ぜひ一緒に何かできたらいいなと思っています。

井上:今日すごくよかったのは、自分の毎日に注意を向けてみると「日常って、実は越境だらけかも」と気づき直せたことです。スタンフォード・ソーシャルイノベーション・レビュー日本版でも、「主語を『わたし』に戻す」ということを大事なテーマにしているんです。

 たとえば今日は、沖縄の宿に泊まっているんですけど、宿の若いオーナーの方と「わたし」同士で話をしていると、お互いの「わたし」の中に多様な側面があることに気づいていくんです。そうすると「これだけしかない」と感じていたことにも、実は、思ってもいなかったようないろんな可能性があることに気づく。自分や相手を通じて世の中の解像度がもっと高くなって、素敵な新しい選択肢が見えてきます。

正能:日曜日の夜のこんな時間に、このセッションに来てくれるくらいなので、みなさんはすごくがんばれちゃうタイプの人なんだと思います。だからこそ「自分が心地よいかどうか」を、意識して大事にしてほしいです。

 周りの人が「なんかそれって、ぬるくない?」って言ってきたとしても、自分の人生なんだから「自分の大事にしたいことを、いかに守っていくか」を大事にしていかないと。「心地よさ=楽」と捉えずに、自分の人生を、大事に生きていきたいですね!

塩瀬:さっきの「苦」の反対を、勝手に「楽」にしちゃいけないってことですよね。僕は若い人に話をするとき「自信には2種類あります」って言っていて。1個目は、過去にあったことに対しての積み上げた自信。つまりself-confidenceです。もうひとつはcreative-confidenceといって、やったことがないことに対する自信ですね。やったことがないことへの期待とか、「面白そう!」とか。だからさっきの「私を中心に始める」っていうのはすごく大事だなと思います。

 今日いらっしゃる人の中には、大きな組織の中で「私」よりも先に考えないといけないことがたくさんあってモヤモヤしてた人も多いんじゃないでしょうか。ぜひ明日、まず会社に着いた瞬間から「私は〜」と言って話しはじめたら、多分1日が変わるんじゃないかなと思います。

越境人材への期待が高まる中で、「私」を中心に始める「これからの越境」セッション終了後の一コマ(デザイン:McCANN MILLENNIALS)