なぜ原因を推測で言ってはいけないのか

 メディアでもちょこちょこ報じられるようになったのでご存じの方も多いだろうが、「拡大自殺」というのは、人生に絶望したり、社会に憎悪を抱いたりした人が、無関係の人を大勢巻き込む形で自殺を図ることだ。昨年10月の京王線刺傷事件や、年末の大阪で24人が犠牲になったクリニック放火事件もこの「拡大自殺」だと言われている。

 と聞くと、「やはり日本でも格差が広がって社会が分断されているからだ」と感じる人もいるだろうが、これは近年になって急にあらわれた現象ではない。

 古くは昭和13年に、岡山県の山村で男が親族や近隣住民を次々と猟銃で殺害し、最後に自殺をした「津山30人殺し」なども、凶行前に遺書を準備していたことから「拡大自殺」だったと言われている。これ以降も、「死にたい!」と叫びながら、見ず知らずの人を切りつけるような「拡大自殺」事件は定期的に発生している。今回、事件を起こした17歳少年もその系譜である可能性が高い。「人を殺して罪悪感を背負って切腹しようと考えた」と言っているからだ。

 さて、では今回の事件が「拡大自殺」だったとしたら、なぜ「孤立感にさいなまれて引き起こした」みたいに、原因を推測で言ってはいけないのか。