リーダーは些末なレベルでのマネジメントに囚われすぎない
――話を戻しますが、コロナ禍でチームがうまくいかなくなったと感じている場合、そこにはコロナ以前からチームをまとめあげるための仕組みづくりをしてこなかったことも関係している、というお話が冒頭でありました。ここからは、チームをまとめあげるための仕組みづくりについて伺えますか。
浅井 先ほどの「チームを成功に導く 成功の循環モデル」では、よい関係性が築けたその先に「思考の質」の向上がありました。チームの「思考の質」がよい状態というのは、そのチームの全員が使命感を持ち、チームのためにすべきことを自分の頭で考えられている状態を指しています。
その段階に踏み込むために欠かせないのは「チーム理念」の共有です。会社においては上層部が定めた企業理念があり、会社の実行部隊であるさまざまな部署・チームには、その企業理念を反映したチーム理念、すなわちチームのあるべき姿、目指す方向性というものがあるはずです。リーダー以下、そのチームに属するメンバーは、チーム理念を理解しているでしょうか?
チーム理念、あるいは企業理念を理解していないと、自分の仕事に当事者意識を持てません。言われたことをやらされている、という感覚からいつまでたっても抜け出せない。また、リーダーのほうもマネジメントの名の下に、事細かく部下を管理することに終始して、企業理念、チーム理念という本質を見失いがちになる。
本来、リーダーは部下を窮屈な型にはめる必要性はなく、ある程度の自由度を持たせて個々の価値観を尊重し、みんなでチーム理念の実現に向けて頑張るのが理想です。そこのところをリーダーは再確認しなければならないし、部下にはチーム理念への理解を深め、なぜソロワークではダメなのか、何のためにチームで頑張るのかを意識してもらえるように試みなければなりません。チーム理念が共有されれば、チームとして一本筋を通すことができます。
――たしかに、目先の数字などだけではなく、本質的に目指すべきところがわからないと、やる気を出したり、チームとして団結したりするのも難しいでしょうね。
浅井 チームにおけるやる気や危機感の差というのは、ほとんどが情報格差から生まれます。チーム理念もそうだし、今チームが置かれている状況、こなすべき課題など、リーダーや一部の担当者だけしか知らないようだと、メンバー全員が連携したやる気に満ちたチームは作れません。
たとえば、職場にあまりやる気のないパート職員がいたとしましょう。とかく、重要な意思決定の会議などは、正社員のみで行うケースが多いものですが、それだとパート職員のやる気は芽生えにくくなります。であれば、パート職員にも会議に参加してもらい、彼らの意見も積極的にすくい上げるようにすればいい。実際、情報格差をなくし、リーダーが全員の意見に耳を傾ける状況を作ったことで、パート職員が目的意識を持って自ら行動するようになり、業務の改善につながったケースもあります。