部下とよい関係を構築するには“誠実な関心”を持つことが重要

――部下との関係性をよくするために、リーダーはどのようなことを意識すればいいのでしょう?

浅井 私はマネジメントの定石として、マサチューセッツ工科大学のダニエル・キム教授が提唱している「チームを成功に導く 成功の循環モデル」をお手本にしています。

浅井 リーダーが部下とともによいチームを作っていくには、このサイクルの起点となる「関係性の質」を高めて、お互いを尊重しあえる間柄にならなければなりません。そのためにリーダーが真っ先にすべきなのは、部下に関心を持つこと。それも一過性のものではなく、継続的に“誠実な関心”を持つことを心がける必要があります。

 どうすれば誠実な関心を持ったことになるのか、というのが難しく感じられるかもしれませんが、要は、部下に丁寧かつ真剣に向き合うことです。たとえば、部下が業務上の悩みを相談してきたら、リーダーとしてはとりあえずアドバイスしますよね。多くの人はそれだけで終わってしまいがちですが、より重要なのは、いつ、どんな相談を受け、自分がどんなアドバイスをしたのか、忘れないように記録しておくこと。そして、その記録を基に部下を気にかけ、アドバイス後にどんな行動をとったか、結果的に悩みは解決されたのか、などを継続的にフォローしていくことです。

 PDCAサイクルにおいて「C」は通常「Check」を意味しますが、本来、リーダーは部下のチェックではなく「Care(ケア)」をすべきだと、私は考えています。できないところばかりチェックしてくる上司ではなく、誠実な関心を持ち続けてケアしてくれる上司の下でなら、「ああ、この人はちゃんと自分を気にかけてくれているな」と、部下は信頼感を持って働くことができるじゃないですか。

――部下との関係性を考えるうえでは、よくリーダーは部下をほめるべきだとも言われますが、やはりそれも大切なことなのでしょうか。

浅井 そうですね。ただ、これも意外とできない人が多い。大多数のリーダーは、100の要求に対し、部下が30の仕上がりで提出してきた場合に、不足している70だけを見て注意したり叱責したりします。ここを改めて、達成できた30をほめるようにしたい。30のものをやり直して40まで完成度を上げてきたら、改善された10の部分について、またほめるんです。

 人材育成のキモは、部下の働きが思いどおりにいかないのは当たり前、という前提に立つことです。そもそも、経験の浅い若手が、いきなりリーダーの期待どおりの働きができる可能性は低い。まずは、今できている部分について適切に評価すべきでしょう。