「部下に甘えるリーダー」の下に、強いチームが生まれる理由

「悩みのないリーダーはいません」――書籍『1万人のリーダーが悩んでいること』(ダイヤモンド社)の冒頭で、著者の浅井浩一さんは断言する。実際、複数の部下を抱えるリーダーには、さまざまな責務がのしかかり、悩みも尽きないのが実状だろう。そこで今回は、JT(日本たばこ産業)でマネジメント能力を開花させ、リーダー道を究めた浅井さんに、リーダーのあるべき姿やチームビルディングの秘訣を聞いた。(ダイヤモンド社 人材開発編集部、聞き手/田村淳一、構成・文/元山夏香)

コロナは問題の根っこを露呈させるきっかけに過ぎなかった

――2022年1月現在、相変わらず世界中でコロナ禍は続き、日常生活や企業活動における行動変容も続いています。ただ、急速な労働環境の変化に適応しきれず、困難に直面しているビジネスパーソンも多そうです。浅井さんは、こうした現状をどのように見ていますか?

浅井 コロナ禍で、ミーティングの大半がオンラインという企業が多くなり、その流れは、新型コロナが収束した後も、新たな働き方として普及し続けると思われます。ただ、たしかに現時点でも、リーダーなどのマネジメント業務に従事する人たちからは「部下と意思疎通しづらい」といった意見が聞かれます。部下の業務の進捗や目下の悩みがわからないだとか、連携がうまくいかないだとか。チームの足並みが揃わず、チームでありながらバラバラの“ソロワーク”状態になっているんですね。

 ただ、こうした状態に陥っているのは、必ずしもコロナが原因ではないと思います。コロナ前から、リーダーが部下と十分にコミュニケーションを図れていなかったことや、チームをまとめあげるための仕組みづくりをしてこなかったことが、根底にあるはず。要するに、コロナは問題の根っこを露呈させるきっかけに過ぎなかった、ということです。

――コミュニケーション不足と仕組みの不備が問題ということですが、部下とのコミュニケーションに支障を来すリーダーの言動とは、具体的にどのようなものでしょうか?

浅井 典型的なのは、部下をほめない、感謝の言葉を口にしない、話を聞かない、そもそも部下に関心すら持たない、といったところです。部下を育てるのはリーダーの仕事ですが、部下の仕事ぶりに対して「お前、ダメだな」と叱責ばかり、下手をすると叱って終わり、というのではお粗末すぎる。そうではなくて、どうやったら部下が成長するか考えなくちゃいけないわけですよね。それにはまず、関係性をよくすることが先決でしょう。

「部下に甘えるリーダー」の下に、強いチームが生まれる理由

浅井浩一(あさい こういち)

1958年生まれ。JT勤務地域限定の地方採用で入社。“どんなに頑張っても偉くなれない立場”からスタートしたが、人を動かす資質を買われて全国最年少営業所長に。次々と職場を活性化させ、歴代最年少支店長に就任。最下位クラスの支店を連続日本一に導くなど、数多くの偉業を達成する。2001年より、JTの現場マネジメントに携わると同時に、日本生産性本部・経営アカデミーで、数多くの企業幹部を指導。現在はマネジメントケアリストとして講演、セミナー、コンサルティングなどを手掛ける。著書に『はじめてリーダーになる君へ』『1万人のリーダーが悩んでいること』(ともにダイヤモンド社)などがある。