中小企業の課題解決としてのテレワークの推進

 企業の規模にかかわらず、業務のオンライン化でテレワークの導入が進みつつあるとはいえ、やはり、多くの課題を抱えているのは中小企業にちがいない。国内企業の99.7%は中小企業であり、労働者の7割が中小企業で働いている――その中小企業の経営課題として以前から指摘されているのが、生産性の向上と人手不足による人材確保だ。こうした問題を解決するにあたっても、業務のオンライン化とテレワークの導入はカギを握っている。

村田 中小企業でもDX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みが不可欠であり、その入り口がまさにテレワークです。テレワークは、社内のネットワーク環境や業務システムの見直しなどのIT化を進めるきっかけにもなります。……とはいえ、企業それぞれの事情もあるでしょう。試行錯誤しながら、徐々に導入範囲を広げていけばよいのではないでしょうか。少しずつであれ、生産性が向上し、社員の安心感や自己効力感も高まっていくことで、経営の好循環につながるはずです。また、テレワークの有無は、これから先の人材採用におけるカギにもなるでしょう。若年層ほど“テレワーク肯定派”が多く(*3)、テレワーク推進の度合いは就職する企業を選ぶ際の条件になりつつあります。居住地域を限定せずに求人募集する企業も増えており、「フルリモートワーク可」の記載があると、求職者の反応が良いそうです。逆に、テレワークを認めていない企業は採用に苦戦すると聞きます。ただでさえ人手不足が深刻になっている中小企業にとって、人材確保の観点からもテレワークの導入は不可欠でしょう。

*3 株式会社スタッフサービス・ホールディングス「新しい働き方の選択肢に関する意識調査 第3弾」(2021年8月)のデータなど参照

 テレワーク導入の最大の阻害要因となっているのが“人の考え方”ということも見逃せません。特に、経営層や管理職を中心とした年輩者の“常識”が壁になっているようです。自分たちのかつての働き方や成功体験がもはや若い世代の価値観に合わなくなっているにもかかわらず、「そんなことは無理だ!」「このやり方がベスト!」といった思い込みにとらわれていないか――テレワークの導入を考えるにあたり、これまでの仕事の常識を振り返ってみてはいかがでしょう?