「中小企業のテレワークに関するQ&A集」の利用を

 では、中小企業が、実際にテレワークを導入する際はどこから手を付けたらよいのだろうか。また、社内に導入し、定着させるためのプロセスや手順はどのようなものだろう。

“緊急措置”から“当たり前の選択肢”へ、ウィズコロナでのテレワークのあり方厚生労働省のホームページからダウンロードできる「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

村田 最初にお話ししましたとおり、それぞれの従業員の仕事の棚卸しとなる“業務分析”から行うのがオーソドックスな方法ですが、私たちも今回のコロナ禍の経験から、中小企業ではオンライン会議やクラウドでのファイル共有といった無料サービスをまず試してみるのがよいと考えるようになりました。手をつけられるところから始め、PDCAを回していったほうが近道ですし、効果も実感できます。

 制度的な面の対応については、厚生労働省が公表している「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」(*4)がよくまとまっていますので、一度、目を通してみてください。人事担当の方にとっては、「4 労務管理上の留意点」「5 テレワークのルールの策定と周知」「6 様々な労働時間制度の活用」「7 テレワークにおける労働時間管理の工夫」などが参考になるはずです。

*4 厚生労働省「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」

 また、当協会のホームページでは「中小企業のテレワークに関するQ&A集(*5)」を掲載しています。そもそも、テレワークとは何か?といった解説から、導入事例、IT・セキュリティについてなど幅広く取り上げています。このQ&Aは、実際に中小企業の困りごとの声を拾い上げたものですから、何らかの参考になると思います。

*5 日本テレワーク協会「さあ始めよう!テレワーク これで、あなたのお悩みを一気に解決」

 テレワークは、人材の確保や生産性の向上などに多くの効果が期待される。企業の規模にかかわらず、その導入の検討や継続を考えるべきだろう。ただし、注意しなければならないのは、企業・団体に属する者の“全員がテレワークをしなければならないわけではない”ということだ。

村田 テレワークによって、場所と時間にとらわれない働き方が可能になる一方で、現場を離れられないエッセンシャルワーカーや出社を希望する従業員、あるいは、一人で自律的に働くのが苦手な従業員も存在します。そもそも、テレワークは働き方の選択肢のひとつであり、すべての業務やすべての従業員がテレワークに移行しなければならないというものではありません。大切なことは、企業側が制度の整備や規則変更について従業員に丁寧に説明し、また、導入後のフォローや必要に応じた見直しを柔軟に行い、テレワークを行うこと・行わないことの納得感を醸成していくことではないでしょうか。

 企業にとってはテレワークの導入がDXの入り口になり、業務の見える化による無駄の排除、ペーパーレス化によるミスの削減、スピーディなPDCAサイクルによるパフォーマンス改善といったさまざまなプラス面を享受できます。その大前提となるのは、テレワークに“従業員がメリットを感じられること”です。その上で、企業が社会にとってのメリットをも生み出していくのが理想。そうした、就業者・企業・社会のトリプルwinの関係を構築することがテレワークの目指す方向だと思います。

 昨年2021年までは従業員の安全・安心のためのテレワークでしたが、これからは、個人の持つ仕事へのモチベーションをいっそう高め、企業や地域の活性化を図ることで調和のとれた日本社会の持続的発展がなされていく――そんなテレワークが全国で展開されることを願っています。