スシローの京樽買収、強気の再建計画とは?「懐かしい味」から新しい寿司へ京樽 石井憲社長

昨年、持ち帰りずしの名門「京樽」は吉野家ホールディングスから、スシローを傘下に持つFOOD&LIFE COMPANIES(F&LC)に買収された。伸び悩む京樽を、F&LC社長の水留浩一は、どう再生するのか。前回の『スシローによるまさかの買収劇、京樽社長が振り回された平成の30年』に続く、後編をお届けする。(名古屋外国語大学教授 小野展克)

「良くできたシナリオ」、投資家の期待を背負ったスシロー

 スシローグローバルホールディングス(現・FOOD & LIFE COMPANIES)が吉野家ホールディングスから京樽を買収、完全子会社化すると発表したのは2021年2月26日のことだ。

 土日の休場を挟んで、3月1日に開けた東京株式市場では、スシロー株が急伸、一時は7%も値を上げた。

 多くの投資家が、スシローによる京樽の買収は、コロナ禍で拡大している持ち帰りずしの強化につながる上、京樽は都心部に多くの店舗を構えていることから、スシローの都心展開の加速にも貢献すると判断し、「買い」一辺倒の展開になった。

 しかも、スシローも京樽も同じすしを扱っている。回転ずしトップのスシローのノウハウを投入すれば、京樽が一気に立ち直るストーリーすら想起された。いわば「良くできたシナリオ」に投資家の期待が大きく先行した格好だ。

 ただ「きれいな絵」を描くだけなら平凡な経営者とて可能だろう。先行した投資家の期待に、現実の収益という結果で応え、さらなるサプライズを生み出せるかどうかで、プロ社長の本当の力量が問われる。

 さらに、京樽の買収は、スシローにとって初の本格的なM&A(企業買収)となる。F&LCのM&A戦略の試金石ともなるだけに、社長の水留浩一にとっては失敗できない挑戦となる。

 では水留は、収益に陰りの出ている京樽を、どうやって再び輝かせようとしているのだろうか。