店員さんの気遣いに対し、感謝の言葉を伝えれば、相手の気分が良くなる。そうすると、次のお客様に対しても、感じ良く接するようになるかもしれない。

 気遣いはエネルギーである。自分がいいエネルギーを放つことで、それが相手に伝わり、循環していく。気遣いはいい気分を生み、いい人間関係、いい仕事へとつながっていく。気遣いは思いやりのバトンを渡すことに他ならない。

◇思考を垂れ流していないか

 自分の思考を垂れ流しにする人は、気遣いができない人だ。悪気なく、思ったことを正直に言い、不用意に相手を傷つけてしまうことがある。その一言で、相手がどんな気分になるかを考えるのが、気遣いができる人だ。

 販売員のAさんは、先輩の服に「去年のモデルですね。物持ちがいいですね」と言って嫌な顔をされたそうだ。この言い方では、先輩が古いものを着ている節約家のように聞こえてしまう。Aさんは思いついたことをそのまま口に出してしまうタイプで悪気はない。しかし、他に良いほめ方はいくらでもあったはずだ。

 かけた言葉で相手の気分が良くなるかどうかに焦点が当たっていなければ、他者に良い影響を与えることはできない。自分の思考を垂れ流すのではなく、第一声を発するときは、相手に想いに心の矢印を向けて、相手の気分が良くなるかどうかを考えることが大切だ。

◇感情のキーワードを見逃さない

 気遣いに正解はない。価値観は、人によって異なるものだから、相手が大切にしていることを理解し、提供しなければならない。大切なのは、傾聴だ。相手の一番話したいことを意識し、共感的に理解しながら話を聴くことである。

 人は話したがりだ。だから、つい自分の話にすり替え、アドバイスをしたくなる。しかし、それでは人の気持ちを掴むことはできない。相手にとって特別な存在になるのは聞き上手だ。

 影響力を持つために、ビジネスで成功しようとしたり、容姿を美しくしようとしたりする人がいる。しかし、最短で影響力を持つ方法は、いい聞き手になることだ。

 傾聴力を鍛えるためには、相手の話にある喜怒哀楽、感情の動きを見逃さないことだ。たとえば、「食事を残す人を見てイライラする」という人は、食事を残してはいけないという価値観を持っている。「イライラする」という感情のキーワードから、その原因を探ることで相手の価値観を知ることができる。感情のキーワードを見逃すことは、心の距離を縮めるチャンスを失ったも同然だ。気遣いができる人は、話の中の感情のキーワード、喜怒哀楽を見逃さない。