ハードワークでげっそり痩せた経験を持つ人もいるかもしれないが、産業医として年間5万人の健康指導をする総合内科専門医の益江毅医師は、著書『やせたい人はカロリー制限をやめなさい』の中で、忙しいビジネスパーソンにこそ「夕食の食べ方を工夫する必要がある」と断言する。残業の日に実践してほしいその食べ方とは。(文・監修 /総合内科医 益江 毅)
睡眠時間が短いと肥満指数が増える!
近年、睡眠時間が短いと肥満指数(BMI)が増えることがわかってきました。睡眠ポリグラフ検査を受けた1828人の血液中の食欲にかかわるホルモンを測定し、BMIを計測したところ、睡眠時間が減少するとBMIが増加することがわかったのです。また、8時間睡眠の人に比べ、5時間睡眠の人は満腹感をもたらすホルモン、レプチンの量が少なく、食欲を高めるホルモン、グレリンの分泌量が多かったという結果になりました。
睡眠不足になると満腹感をもたらすホルモンである「レプチン」の分泌量が減り、反対に食欲を高めて脂肪を体内に蓄積する作用のあるホルモンである「グレリン」の分泌量が増えることで、意識せずとも食欲が増して私たちは食べすぎてしまい、その結果、内臓肥満が増加してしまうのです。
私が栄養指導をしている方にも、「寝る直前に食事をすると太ると言われて、夜遅く夕食をとった日は2時間以上頑張って起きていたが結果的に体重が増えてしまった」という残念な経験を話してくれた人がいました。ダイエットのために、結果として睡眠不足に陥るのはナンセンスです。
夕方の「ちょい食べ」がおすすめ!
太りたくなければ夕食はなるべく早く食べたほうが良い、ということはわかっていても、残業などがあるとどうしても夜遅い時間に夕食になってしまいます。夕食を食べそびれてしまった、もういっそ抜いたほうがダイエットに良いのでは、と思いがちですが、空腹で眠れず結局、夜中にカップラーメンを食べてしまう、なんていうこともあります。
夜遅く食べざるをえない人のための解決法を示してくれる、こんな研究があります。健康な女性14人(平均年齢22.6歳)に、8時に朝食、13時に昼食をとり、夕食を次の3つのパターンでとってもらい、血糖値の変化を調べました。
(1)21時に夕食をとる
(2)分割して夕食を取る(18時にトマトとご飯、21時に野菜と主菜)
(3)18時に夕食を取る
その結果、(1)の遅い時間帯に夕食をとった日は、夕食後の血糖値のピークが高くなり、翌朝まで高血糖が続きましたが、(2)の分食では、(1)の遅い夕食よりも血糖値が低く抑えられました。この研究で、同じ人が同じ内容の夕食をとっても、食べる時間帯、食べ方が異なることによって血糖値が大きく影響を受けることが示されたのです。
今日は遅くなる、とわかっている日は18時までに軽くおにぎりなどで主食を食べておき、帰宅後は血糖値を上げる糖質をあまり含まないおかずや野菜、スープなどをとるという「分食」で、ダイエット効果を落とさずに継続していくことができます。
睡眠時無呼吸症候群は肥満も悪化させる
また、肥満になると、喉の奥が脂肪によって狭くなり、空気の通り道である気道をつぶすことから、「睡眠時無呼吸症候群」の原因にもなります。
肥満の人に多いのは喉の奥が閉じてしまう「閉塞型」というタイプで、途中で息が止まるような大きないびきを特徴としています。睡眠時無呼吸症候群を発症すると、眠っているつもりでも眠りが浅くなり、朝起きても目覚めが悪くなります。重症化すると、強い眠気による交通事故や、生活習慣病の悪化につながっていきます。睡眠時無呼吸症候群があると、肥満をさらに悪化させることになりますので、目覚めの悪さが気になったり、家族にいびきを指摘されたら、睡眠外来への受診をおすすめします。