哲学コンサルティング写真はイメージです Photo:PIXTA

テクノロジーのすさまじい進化と感染症パンデミック。社会の成り行きは不透明さを増し、ビジネスの不確実性は高まるばかり。VUCA(ブーカ=変動性・不確実性・複雑性・曖昧性)とも言われるこの時代、世界経済をリードする米国企業を筆頭に、ビジネスに哲学コンサルティングを活用する動きが見られる。哲学とビジネスは、やや距離がある印象だが、なぜいま企業は哲学を求めているのだろう。(取材・執筆/末吉陽子)

倫理を軽視したGoogleで起きた
社員たちの抗議行動

 哲学コンサルティングとは何か――それを紹介する前に、一つの事案を取り上げたい。

 2020年12月、米Googleに所属していたAI研究者であるティムニット・ゲブル氏が解雇された。事の発端は、ゲブル氏が「自然言語の解析におけるAIの進化によって生じる倫理的問題」に関する学術論文の共著者になり、米Googleの大規模言語モデルに含まれる差別的バイアスを指摘したことにある。