米国のビジネスにインフレがじわりと波及し、原材料価格や輸送コスト、賃金の上昇を超えて企業に想定外の打撃をもたらしている。
インフレは「マールボロ」メーカーの法務費用を押し上げ、保険大手オールステートが支払う自動車修理代を膨らませ、クレジットカード残高の返済を鈍らせている。さらに、ソーシャルメディア企業は広告費縮小の懸念にさいなまれている。
この1年、企業がインフレに警鐘を鳴らす一方、エコノミストの多くは物価上昇を経済活動再開による一時的な混乱と受け止めていた。だが物価は上昇し続け、インフレ率は最近になって40年ぶり高水準を記録。連邦準備制度理事会(FRB)は利上げ計画の加速を迫られている。
インフレが収束する気配がない中、企業は利益確保を目指し、顧客に転嫁する値上げを増やしている。
カーネギーメロン大学のチェスター・スパット教授(金融学)は、「それは少数のモノから始まり、より多くのモノへと連鎖する」と話す。同氏は2004年から07年まで米証券取引委員会(SEC)のチーフエコノミストを務めた。
スパット氏によると、インフレの主な問題は値上がりではなく、物価がばらばらのタイミングで異なる幅で上昇することだという。ある物価が他の物価より大きく上昇すると、企業や消費者は支出計画を変えるかもしれず、経済全体に影響が広がりかねない。