「現在、日本の自殺者数は減少傾向にありますが、10代だけを切り取ると、むしろ自殺率は増加し続けています。特にコロナ禍では、市販薬によるオーバードーズ患者が急激に増えました。恐らくDVなど家族との関係に葛藤を抱える多くの若者が、自宅で過ごす時間が増えたことでより苦しみ、ドラッグストアに駆け込んだのでしょう。緊急事態宣言中はステイホームが推奨されていましたが、そもそも居心地のいい“ホーム”を持たない若者は大勢いたのです」

 若者のオーバードーズだけを問題視してただ禁止するのではなく、その裏にある、死を願うほどの葛藤を抱える若者の増加に焦点を当てるべきなのだ。

オーバードーズ問題の
根本的な解決に必要なこと

 松本氏によれば、周囲の人がオーバードーズに気づくことはかなり困難だという。

「たとえ周囲の人間が異変に気づけたとしても、既に依存症レベルになっている場合は、専門家の助けが必要となります。そもそも、市販薬でオーバードーズするのは、周りに相談することができないほど深刻な問題を抱えている状況。オーバードーズの行為自体を責めるのではなく、そのきっかけとなる問題に目を向けてあげてください」

 薬は苦しみを和らげる一時しのぎにはなるが、問題への根本的な解決にはならない。「当事者は薬を乱用する “悪い子”ではなく、深刻な悩みを抱えているのだ」という意識で誠実に向き合うことが求められる。

 また、「市販薬によるオーバードーズが増加した背景には、少なからず国の責任がある」と松本氏は続ける。