市販薬のなかには、数十年も前の販売開始時から内容成分が変わっていないものも多く、最新の医療現場では副作用の影響などが危険視される成分が入っていることもあるそうだ。

「たとえば、オーバードーズで用いられやすい市販鎮咳薬には、メチルエフェドリンという、法規制されている覚醒剤原料が含有されています。医薬品に少量含まれるのは認可されていますが、これを多量に摂取すれば違法薬物を摂取しているのと同じこと。アッパー系ドラッグと同様に、眠気が飛び、元気になる効果があります」

 メチルエフェドリンは食欲を抑える作用もあり、服用すれば一時的には痩せる場合もある。実際、オーバードーズをする女性には、「痩せてきれいになりたい」という理由から手に取った人もいるそうだ。

「同じく市販鎮咳薬に含有されているコデインは、麻薬及び向精神薬取締法で規制されている成分です。モルヒネやヘロインと同じダウナー系で意識がボーッとしやすく、覚醒剤よりも依存性が高いため、やめようとすると離脱症状が激しい。また、別の市販感冒薬に含まれるアセトアミノフェンという成分は、多量に摂取すると肝臓や腎臓を傷め、若くして透析が必要になるほど身体に影響を与えたり、死に至るケースもあります」

 オーバードーズに走る若者は、初めはアッパー系の効果を期待して、学校に行きたくないとき、つらいことを周囲に隠して振る舞おうとするときに薬を服用する。だがそれが常態化していくと、今度はダウナー系の成分による離脱症状に苦しむのだという。

 松本氏は、「生命的な危機に瀕するリスクは、法律で規制されている大麻よりも市販薬のオーバードーズのほうが高いと思います。しかし、死のリスクを知ってもなお、オーバードーズをやめられない若者が増えています。そういった人たちは、『オーバーズすることで、万一、死んでしまうことがあったとしても、それはそれで構わない』と考えています」と指摘する。