安全対策は「コスト」のウソ、
安全に投資すればするほどもうかる、が正解
私のような経験をしている経営者は多くはないでしょう。しかし、どこの現場にもたいがい、「安全第一」と書かれています。まさか、経営者として「安全第一」を否定する人は表向きいないでしょう。
しかし、心中は違うかもしれません。
「安全は大切だけど、安全に投資したって、業績が上がるわけでもないし……」
「倒産しそうなのに、安全にコストなんてかけられない」
本音は、こんなところではないでしょうか?
でも、本当は正反対です。安全をコストで測ってはいけないのは大前提。しかし実際は、もうかったから安全投資、ではなく、安全に投資したからもうかった、が正解なのです。安全にすればするほど、従業員が快適に働けるほど、生産効率は上がります。
そして、爆発的に利益が出始めたのです。
安全を考える経営者は現場を改善できる
私は、「危ないと思ったら、どんな高額な機械が壊れてもいいから逃げろ! 手を離せ!」と言い続けてきました。
労災事故を減らすためにできることから始め、常に現場を改善しながら、従業員にも口うるさく安全を言い続けました。
私自身も、当初は分かりませんでしたが、その結果が、整理整頓や新しい機械の導入、省人化へとつながっていったのです。
同じ仕事をより安全なだけでなく、スピーディーに、確実に進められるようになり、業務の効率化、改善は、もうかる筋肉となり、安全・快適で笑顔があふれる職場で、従業員には石川県平均の倍額にもあたる給与を支払えるようになりました。
その結果、どのように100億円もの価値に変わっていったのか。次回以降、そのポイントを述べていきましょう。
(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか ――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。