なぜ、会社はもうからないのか?、なぜ、現金が手元に残らないのか?――。その答えが「安全をおろそかにしているから」なのだとしたら、簡単に腑に落ちる人は多くないかもしれません。取引先ゼロ+キャッシュフローほぼゼロ+金融機関からの融資拒否という経営状態だった鍛造工場を引き継ぎ、わずか数年でもうかる体質に変貌させ、上場企業に100億円で売却した平美都江氏。その半生をつづって大きな反響を得た前著『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか』に続き、爆発的な利益をたたき出せる経営ノウハウを、マンガを交えて解説していく第2弾『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』を上梓しました。一見結びつきにくいと思われがちな「安全対策」と「利益」。本連載では、平氏の考えと取り組みのエッセンスを抜粋・再構成のうえ紹介します。
病気の従業員を
辞めさせたくなかった……
私に言わせれば、従業員の健康自体が、「安全第一」に含まれます。
多少おせっかいに見えるかもしれませんが、労災事故に限らず、従業員の健康保持も、経営者の責任だと考えています。
省人化し、生産効率を高めれば高めるほど、ムダな人員はいなくなります。従業員全員が大切な人材です。もし彼らが健康ではなくなり、欠けてしまったら?
そして、毎日いっしょに仕事をしている私や同僚も悲しい思いをします。それは、会社にとって、経営者にとって、大きな痛手です。そもそも、自分と関わってくれる人には、いつでも健康で、幸せであって欲しいのです。
転移したがんと3年間闘病し、無事生還してくれた従業員がいます。就業規則上は解雇もできたのでしょうが、私にはどうしてもできませんでした。
むしろ、なぜ十分な健康診断、がん検診を受けさせてこなかったのか。法令に定められているだけではなく、おせっかいだと言われても最高の検査を受けてもらい、いち早く治療に入ってもらえれば、転移も早期発見できたのではないか――。
あるいは、労災以外の健康管理など、一人前の社会人なら従業員自らが果たすべき責任だという方もいるでしょう。
しかし私は、同時に経営者も、本人とともに、時にはけしかけながら、健康を守っていく必要があると思うのです。病気で出てこられないやつはダメだ、などという精神論で片付けたくはありません。
そして、健康で長く働けるために、具体的な方策を示したいのです。