従業員の「ポカミス」は経営者の責任だ

なぜ、会社はもうからないのか?、なぜ、現金が手元に残らないのか?――。その答えが「安全をおろそかにしているから」なのだとしたら、簡単に腑に落ちる人は多くないかもしれません。取引先ゼロ+キャッシュフローほぼゼロ+金融機関からの融資拒否という経営状態だった鍛造工場を引き継ぎ、わずか数年でもうかる体質に変貌させ、上場企業に100億円で売却した平美都江氏。その半生をつづって大きな反響を得た前著『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか』に続き、爆発的な利益をたたき出せる経営ノウハウを、マンガを交えて解説していく第2弾『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』を上梓しました。一見結びつきにくいと思われがちな「安全対策」と「利益」。本連載では、平氏の考えと取り組みのエッセンスを抜粋・再構成のうえ紹介します。

口で言うだけでは無責任!
気合だけでは安全にならない

 私自身、常に従業員に「気をつけて!」「注意しろよ」と声を掛けていました。それは当然として、しかし「気をつけろ」と言っただけで、いわゆるポカミスや、事故が減るとも思いません。

 この点を誤解している経営者は少なくありません。気をつけていないから、決められたとおりにしないから、気合が足りないからミスをすると考え、むしろ腹を立てたりします。

 しかし、私に言わせれば、これは安全責任者として無責任、怠慢と言わざるをえません。

 気合は各自入れてもらうにせよ、「実際に事故が起きるリスクを最小化する」責任は、経営者にあると思うのです。

「気合が足りない」とか「気をつけろ」と言葉だけかければ事故が防げると思うのは、自分が無能な証拠です。

 事故防止の浸透には、具体的、継続的な方法が必要なのです。

ポカミスを防ぐ緊張感は
「多能工」化で保てる

 集中力を常に最大限にキープすることは難しい以上、集中力の低下を防ぐだけでなく、仮に途切れても大事故にならない具体策をとらなければなりません。

 一般的な法則として、同じ仕事をずっとしていると、集中力は落ちます。

 仕事でも遊びでも、初めて経験することは強い緊張と興奮を伴います。

 でも、同じ事を2回、3回と繰り返したら? 半年、1年、3年とたったら? 「あんなの左手でもできる」「目をつぶっていても大丈夫」「寝ながらでもできる。オレは天才だから」なんてうそぶいているかもしれません。危険なのは、まさにこんな時です。

 こうした状況を防ぐ方法があります。

「多能工化」、1人がする仕事の範囲を増やすのです。

 1人ができる作業を、自動化、機械化、効率化、省人化などで増やすと、ローテーション作業となって「慣れ」が生じにくくなります。

 機械を操作したら、資材の搬入にまわったり、フォークリフトを運転したりします。休み時間も一斉ではなく、ラインを回したまま交代で取るため、過度に緊張が緩みません。

 同時に、全ての作業が属人的ではなくなるため、相互に観察しながら状況を把握でき、危険防止だけでなくモチベーションやクオリティも上がります。