パソコン(PC)業界の巨人、米デルが中国市場で大攻勢に出る。このほど、現在45都市に展開している販売拠点を、今後3年以内をメドに、1000都市まで拡大するというアグレッシブな計画が明らかになった。
今年に入って、同社の中国での拡大路線は急加速している。まず3月に、同社としては初めて、中国市場に特化した低価格帯のデスクトップPCを投入。この8~10月期の出荷台数は前年同期比26%増と好調に推移している。近日中に、中国市場を狙った薄型・軽量のノートPCも投入する。
また、9月には中国最大の家電量販店である国美電器と提携。すでに大都市を中心に120店舗で販売を始めており、来年の春先までに300店舗まで広げる計画だ。
デルが中国における事業拡大を急ぐ理由は2つある。
まず、市場の成長性の高さだ。2006年の中国市場のPC出荷台数は約3700万台と日本市場の2.5倍強で、前年比20%近く伸びた。2011年には8000万台を超えるといわれており、いずれ世界最大規模の市場になることは間違いない。
もう1つ、デル特有の事情も同社の中国展開を加速させている。これまで同社は、ダイレクトモデル(電話やインターネットによる直販方式)にこだわってきたため、それがなじまない中国市場で出遅れていた。将来、世界最大規模となる市場で、これ以上後れを取ることは致命傷となる。その焦りが、デルを駆り立てているのだ。
次々と施策を打ち出している同社だが、中国市場攻略のハードルは高い。特に、小売りチャネルの拡大は、ダイレクトモデルを貫いてきた同社にとっては未知の領域である。いずれ1000都市に広がる販売拠点の末端まで、在庫管理と価格管理を徹底させることができるのか。課題は山積している。
先月発表された2007年8~10月期の決算は、2四半期連続で増収増益となり、業績は回復基調に乗った。次に目指すのは、米ヒューレット・パッカードにさらわれた世界シェア首位の座の奪回だろう。中国市場での店舗販売の成否が、そのカギを握っている。
(『週刊ダイヤモンド』編集部 前田 剛)