熱を避けるシフトが「多能工」化、
ローテーション化に直結!
先ほどあげた暑さ対策のうち、下から2番目に「仕事は30分交代に」という項目があります。実はこれが、生産の効率化に直結していたのです。
高熱と向き合い続けるのは大変です。しかしかつては、各個人の職人技に頼っていたため、仕事が属人的で、交代するわけにはいきませんでした。
そこで、できるだけ機械を介するように、操作を簡略化して誰でもできるように改善し、熱と向き合う仕事をローテーション化しました。それでも体温が上がってしまう作業は残りますが、交代後すぐに強い冷房の効いたボックスに入ってもらいます。
これで、「多能工化」も達成できました。機械を導入することで属人的な仕事がなくなり、同じラインの従業員が交代しながら作業できるようになりました。人員の配置は格段にやりやすくなり、従業員の集中力も上がります。有給休暇も断然取りやすくなりました。1人が休んでも生産が止まる心配がないからです。
たかが冷房・冷却にカネをかけ過ぎだ、と思われる方もいるかもしれません。
しかし、その結果得られた劇的な生産効率の改善で、実は十分吸収できてしまいました。
安全・快適だからこそ、より儲かるのです。
(本原稿は、平美都江著『なぜ、おばちゃん社長は「絶対安全」で利益爆発の儲かる工場にできたのか?』から一部抜粋・改変したものです)
平鍛造株式会社前代表取締役社長。現在は株式会社インプルーブメンツ代表取締役社長。1956年東京都生まれ。1977年日本女子大学理学科を、父の看病のため中退し、父が設立した平鍛造株式会社に入社。工場のオペレーターや営業職を経て、1986年専務取締役就任。宅地建物取引士、CFP、一級ファイナンシャル・プランニング技能士などの資格を次々と取得。父の天才的な技術で製造される超大型鍛造リングにより、他の追随を許さない企業として急成長。その後、リーマン・ショックによる景気悪化などにより受注量が激減。型破りな父による強引な客先交渉が裏目に出て、2009年に廃業する事態に。会社存続の危機に追い込まれる中、代表取締役社長に就任し営業を再開。一度離れた顧客の信頼回復に努めつつ、数々の経営の合理化を進め、数年で業績を回復させる。2018年大手上場会社へ株式を90%譲渡するが、2021年6月まで代表を務める。その後、株式会社インプルーブメンツを設立し、代表取締役に就任。著書に、『なぜ、おばちゃん社長は価値ゼロの会社を100億円で売却できたのか――父が廃業した会社を引き継ぎ、受注ゼロからの奇跡の大逆転』(ダイヤモンド社)がある。