整理整頓して安全通路を確保、
それが効率アップに結びつく

 弟を失うフォークリフト事故が起こった原因のひとつは、構内の整理整頓がされていなかったからです。

 かつては生産と技術ばかりを優先して、整理整頓という概念自体がありませんでした。

 雑多に並ぶ工具、金型、機械、資材、完成品、廃棄物やごみ、その他何だかよく分からないもの……各自の好みで、自分のやりたいようにやっていたのです。フォークリフトは、それらを避けて運転しなければなりませんし、死角も生まれます。

 安全のために整理整頓を徹底したところ、フォークリフトを使った作業は、安全度が高まっただけでなく、動きが速くなり、効率が大きく上がりました。

 それだけではありません。床に物を置かず、棚を大量に準備して整理整頓を徹底したところ、物を置いたり再び床面から拾い上げたりする非効率や、どこに何をおいたか分からなくなり探しているような非効率が激減したのです。

クーラーガンガン、
壁をぶち抜いて体を冷やす!

 私が経営していたのは鍛造工場です。真っ赤に熱した金属を相手に作業をしていますので、当然暑さとの戦いになります。

 昔は夏場になると、それこそ倒れそうな状態で働き、仕事が終わった後はふらふらになっていたものです。

 とにかく体温を上げず、体を楽にしたい。そんな思いから、徹底的に暑さ対策を打ってきました。

●2リットルのペットボトル、梅干し・塩あめ、冷凍枕を常備
●「どでかファン」を置けるだけ置く
●壁をぶち抜いて自然風をできるだけ入れる
●大型室外機のスポットクーラーを導入
●大型天井ファンを設置
●力仕事の従業員の横に小型プレスを導入
●仕事は30分交代に
●個室の急速冷却室を設置

 おおむね完成を見るまで、5年くらいかかりました。特に、冷房の徹底と壁の「ぶち抜き」(自動シャッター化)には億単位の資金をつぎ込みました。これだけの資金をつぎ込めたのは、従業員の安全対策を徹底的に行ったら自然と利益が増えていったからです。

 古くからいる従業員は、「ずいぶん楽になった」とか「最近の若い連中は甘やかされている」なんて言っていますが、それだけ快適になっているということです。