カーリング女子「銀メダル」の舞台裏、ロコ・ソラーレを支えた原動力とは藤澤五月(右)にメダルを掛けられる石崎琴美(左) Photo:JIJI

日本の冬季五輪史上で最多となる、金銀銅合わせて18個のメダルを獲得して、17日間に及んだ北京五輪が閉幕した。大会最終日の20日に最後のメダリストとなったのは、カーリング女子代表ロコ・ソラーレ。残念ながら金メダルには手が届かなかったが、前回平昌五輪の銅を上回るカーリング史上最高の銀メダルを獲得。各選手の個性がチームとして機能したことが、この快挙の原動力となっていた。銀メダル獲得までの軌跡を追った。(ノンフィクションライター 藤江直人)

「最終日までみんなでプレーできたことがうれしい」
藤澤五月の言葉に込められた思いとは

 太陽のように周囲を照らす笑顔と、胸元に付けられたワイヤレスのピンマイクが何度も拾った歓声やさまざまな言葉。そして、頬を伝わせた涙も歓喜だけでなく、悔しさや不甲斐なさなど、その時々に抱かれた感情を素直に表していた。

 競技が行われるシート(氷のリンク)の上から、そして競技後のインタビューエリアから喜怒哀楽を発信しながら、大会最終日には金メダルをかけた決勝に挑む。カーリング女子日本代表ロコ・ソラーレは、北京冬季五輪を通して日本中を魅了し続けた。

 残念ながら、決勝ではイギリスに敗れた。それでも手にした、前回平昌五輪の銅を上回る銀メダルの価値は、スキップの藤澤五月が残した言葉に集約されている。

「ここまでこのメンバーで今日まで、最終日まで、みんなでプレーできたことがすごくうれしかったですし、このチームを本当に心から誇りに思っています」

ストーンを投げるのは4人
一人目の「リード」が布石を打つ

 カーリングは15~16世紀にかけて、スコットランドで発祥したとされている。ゆえに、五輪を含めた国際大会の試合開始前には、スコットランドの民族衣装キルトに身を包んだ奏者による、同じくスコットランドの伝統楽器バグパイプの音色が流れる。

 厳かな雰囲気の中で始まるゲームには、2つのチームから4人ずつが臨む。シートの端に位置する4つの同心円で構成されるハウスを目がけて重さ約20kgもある、花こう岩から作られるストーンを両チームが交互に氷上に滑らせていく。

 一番手から順にリード、セカンド、サード、スキップと呼ばれる各選手が投げるストーンはそれぞれ2つずつ。ストーンをハウスの中心により近づけたチームのみがそのエンドの得点を獲得し、これを10回繰り返した結果として総得点を競い合う。

 ロコ・ソラーレのリードは、28歳の吉田夕梨花が務める。ゲームの流れを作る役割を担うリードは、ガードストーンを真ん中や、あるいは左右にしっかりと置く仕事を多く求められる。最終的に自分たちが得点を上げるための、いわば“布石”となる。