北朝鮮との軍事合意などで
韓国の国防体制が弱体化

 ウクライナは1991年の独立当時、通常兵力で欧州最強国の一つであった。当時は総兵力78万人、戦車6500台、装甲車両7000台、火砲7200門、航空機2000機などを保有していたという。

 しかし、2014年にクリミア半島を失った時、テニュフ国防相代行が議会に報告した内容は衝撃的であった。全体兵力20万人のうち即時投入できる兵力は6000人にすぎず、戦車・装甲車などの軌道装備は燃料が不足し、バッテリーは除去されていた。600機の航空機のうち稼働するものは100機にもならなかった。

 加えて、ウクライナは旧ソ連から引き継いだ数千個に及ぶ核兵器を放棄した。ウクライナが核兵器保有国であったならば、プーチン氏の侵攻はなかったかもしれない。

 ウクライナがロシアの侵攻を受けた根本的要因は安全保障意識の欠如である。これについて中央日報は、国防研究院客員研究・予備役陸軍少将であるバン・ジョングァン氏の寄稿文を載せている。そのポイントは次の三つだ。

 第1に脅威の本質は、相手の「意図」ではなく「能力」だ。相手の「意図」はいつ変わるかわからない。ウクライナはロシアの「善意」を信じて脅威を認識してこなかった。

 第2に戦略的思考の重要性である。ウクライナの指導者は、NATO加盟で国防の問題を解決できると考えたのではないか。

 第3に、軍備に加え、それを運用する能力も重要である。これは長期間の体系的教育と実践的訓練を通じてのみ会得できる。

 これらの三つのポイントにおいて、果たして文政権の安保政策は大丈夫と言えるだろうか。

 まず第1のポイントについて、文政権は北朝鮮に対して友好的に接すれば、北朝鮮もこれに応えてくれるだろうと、その「善意」を信じ切っている。北朝鮮が強力な挑発行動に出ようとも、これを非難せず、単に遺憾と述べるだけである。また、北朝鮮に非核化の意思があることを宣伝して回っている。だが、北朝鮮が望む制裁緩和や南北協力事業の展開は、金正恩総書記が望む核・経済並進路線の達成を支援することになる。

 次に第2のポイントについて、文政権は北朝鮮との南北対話と米朝対話の枠組みを維持することが重要であり、そのためにも北朝鮮との終戦宣言を行い、朝鮮半島の平和プロセスを進展させることが重要と主張している。だが、文政権が推進する朝鮮半島の平和体制構築の方法論は「北朝鮮の望みを聞き入れてこそ平和がやってくる」という根拠のない理想論に基づいており、実際、北朝鮮はこれに全く乗ってこない。