ブラックボックスの
政治資金収支報告書

 第三の理由は政治資金収支報告書が“ブラックボックス”になっている、という問題がある。筆者が入手した京都府連事務局長が作成した引継書には次のように書かれている。

〈次に、選対会議の開催と併せて、その会議の後には、各候補者からの原資による活動費を府議会議員、京都市議会議員に交付しなければなりません。

 この世界、どうして「お金!」「お金」なのかは分かりませんが、選挙の都度、応援、支援してくれる府議会議員、市議会議員には、活動費として交付するシステムとなっているのです。

 活動費は、議員1人につき50万円です。候補者が府連に寄付し、それを原資として府連が各議員に交付するのです。本当に回りくどいシステムなのですが、候補者がダイレクトに議員に交付すれば、公職選挙上は買収と言うことになりますので、府連から交付することとし、いわばマネーロンダリングをするのです〉

 引継書に書かれたこのスキームは、選挙買収の金のやりとりを京都府連や各政治団体の政治資金収支報告書に記載することで、金の流れを“合法化”、つまりマネーロンダリングしようというものだ。実は当局には「警察などが政治団体の捜査に入ることは、政治活動の自由を妨げる可能性があると及び腰になりがち」(府連関係者)という事情があるのだという。

 長らく政治資金規正法はザル法だと批判されてきた過去がある。例えば日本維新の会の池下卓衆院議員(大阪10区)の政治団体が、池下氏の父から事務所を無償提供された問題が浮上したときのケース。政治資金規正法に抵触する可能性があるという指摘に対して、池下氏は「報告書を修正しており、問題はないと考えている」と答えていたのだ。

 政治資金の問題が浮上しても、議員の「適正に処理している」という言い分が通用したり、「政治資金収支報告書を修正する」というような回答だけで問題が収束するというケースが多い。

 なぜかというと、同法は罰則規定が緩い法律として知られているからだ。政治資金規正法は総務省のホームページに「政治団体及び公職の候補者により行われる政治活動が国民の不断の監視と批判の下に行われるようにするため」の法律とされているように、「政治活動を国民がチェックする」(法曹関係者)ことを主目的とてしている法律だからだ。故に法令違反を指摘されても“怖くない”という意識が議員のなかにあるといわれている。

 京都府連の対応も同様だった。筆者がマネロン選挙買収疑惑については取材をしていると、西田氏をはじめとして関係議員たちが「政治資金について法令に従い適切に処理している」と回答するケースが続発した。

 党勢拡大の金であり選挙買収ではないという説明を西田氏らは繰り返しているが、事業明細などを提示して党勢拡大の費用だった根拠を提示しているわけでは決してなく、政治資金規正法を盾にそう強弁しているだけともみえる説明の仕方なのである。

 府連会長の西田氏はYouTubeで一方的に「事実無根」と持論を述べるだけで、説明責任を果たそうとすらしない。大ざっぱに言えば政治資金収支報告書にさえ記載さえすれば、なんでもオッケーという考え方に政治家がなってしまっているともいえるだろう。