ウクライナで貨物船動けず、乗組員と貿易ピンチPhoto:Anadolu Agency/gettyimages

 ウクライナのオルビア港付近で立ち往生していたバングラデシュの貨物船の乗組員らは、爆発音を耳にした。次の瞬間、船のブリッジが炎に包まれた。

 3月2日午後5時25分、1発のミサイルが貨物船「バングラサムリディ」に命中し、船員1人が死亡、数人が大やけどを負った。船員やその家族、ウクライナ当局が明らかにした。ロシアのウクライナ侵攻後、ウクライナ沿岸でミサイルや砲弾の被害を受けた船舶は、同船で5隻目だ。

 黒海の海運はウクライナ戦争で深刻な打撃を受けており、国際船の運航と世界のサプライチェーン(供給網)に広範な悪影響をもたらしている。海運情報会社によると、何十隻もの貨物船がミコライウ港で立ち往生している。ロンドンを拠点とする海事情報会社「ウィンドワード」の推計では、ウクライナ各港で身動きが取れない船舶が約200隻あり、その乗組員は3500人に上る。海事史家らによれば、現在世界中で立ち往生状態にある船舶の数は、第2次世界大戦後のどの時期よりも多い。

 今回の混乱は、世界第2位の穀物輸出地域の海運が途絶えたことを意味する。ウクライナは世界のトウモロコシ輸出の16%を占めている。小麦の輸出は、ロシア産と合わせて世界の30%を占める。世界の小麦価格は、ウクライナ侵攻の1週間前と比べ、55%以上急上昇している。