コミュ力最強「ゴゴスマ石井」が伝授する会話の極意

 77年生まれ、大阪府東大阪市出身の彼が実践しているのは「誰も傷つけない話し方」。人をいじらずに自分をいじる、とことん相手を褒め、謝れることだけでいいからまず謝る、嫌みなく自慢する。とにかく笑顔と挨拶。全ては気持ちの良い笑いにつなげるためで、それはつまるところ、自分もそういう笑いを人から聞きたいからだという。

 筆者が複雑骨折メンタルを癒やされたのは「賢そうと思われるのは得より損」の項。「人はスキのある人を好きになる」。賢いんですアピールは人にバリアを張らせるので、損しかしないから「アホに見せたほうが絶対に得をする」。競争競争の現代社会では、デキる人材マウンティングでみんな忙しそうだが、「無駄に敵を作ることほど、無駄なことはない」。石井は賢(さか)しげなカタカナ語は使用禁止だと言う。だから最近増えているカタカナ語は「ジュース」レベル以外、全部言い換えたほうがいいんじゃないか、とまたオチが小気味いい。

 もし取引先の偉い人が「号泣」を「ごうお」と間違って覚え、「いやー、あの映画、ごうおしたよ」「君も、ごうお必至だよ」と連呼していたら、どう訂正する? 行きたくない誘いは、どう上手に断る? 一緒に頑張ってきたメンバーを外さなきゃいけないとき、上司としてどう伝える?

 答えは本書の中で。「批判より提案、嘆きよりユーモア」。「上機嫌でいよう。上機嫌『風』でもええよ」。確かにいいユーモアは眉間にしわを寄せた「批判」を寄せつけない。「狭い世界で、身近な慣れた人とだけしゃべっているのは、楽かもしれないけれど、楽しさは頭打ちになるような気がします。自分の成長も、頭打ち。どんどん頑固なオッサンになっていってしまいそうです」。読みやすい日本語と分量とテンポで、これまた優れた話し手の石井らしい作りに、読んだ後は不思議と気持ちが軽く、安らいでいる。