心理的安全性の高い組織を増やすために
塩瀬:最後にみなさんからメッセージをいただきたいと思います。ちょっと無茶ぶりになりますが、明日からすぐに使える活力の出るメッセージか、もしくは差し障りのないメッセージかを宣言してからお願いします(笑)。
石井:では私からは差し障りのないメッセージなんですけど(笑)、心理的安全性やカルチャーが今日のテーマでしたけれども、カルチャーってそれぞれの組織の「歴史」を背負っているので、いきなり組織全体を変えていこうというのはすごく難しいと思います。まずは1時間の会議を変えていこうとか、同僚と後輩の3人のチームでいい感じで話せるようになろうとか、身近なところからスタートするのがオススメです。
今日はたくさんの方々からチャットもいただきました。「いつもはあまり書き込めないけど、今日は書けた!」という方もいらっしゃるのではないかと思います。このように出会ってほんの1時間でも、お互いにちゃんと話を聞くとか、思っていることを本音で話すとか、一つひとつのアクションを変えるところから始めてみてください。まずはこの1時間、まずはこの1日の心理的安全性から、いいカルチャーはつくっていけます。
中村:私からはみなさんがすぐに使えるアクションをお伝えしようかなと思います。コロナ禍が落ち着いたら、忘年会や新年会がみなさんの企業でも行われると思うんです。そのときに上司と部下の垣根をなくして、仲よくなりたい上司がいれば、普通はビール瓶を持ってお酌しに行くじゃないですか。もうそれはやめましょう。持っていくのは、温かいおしぼりです。そして温かいお茶です。
ビール瓶を持っていくとまったく記憶に残らない人になりますが、温かいおしぼりをそっと持ってきてくれたり、温かいお茶を持ってきてくれたりしたら、必ず後から「おしぼりありがとう」って向こうから声をかけてきてくれると思います。もちろん、おしぼりやお茶を用意してくれたお店の方に「うまくいきました」と声をかけるのも忘れずに。そうやって、人とちょっと違う行動を明日起こすことによって、人と人との関係性はよくなったり、心の距離が縮まったりしますので、よかったら使ってみてください。
唐澤:参加者として見たときに、このセッションって塩瀬さんのモデレートが素晴らしかったですよね。確かにカルチャーとか心理的安全性っていうセッションをやっている僕たちが、真面目でつまらないことしか言ってなかったら、それは説得力ないんですけど、本人たちが楽しくやっているとか、やっぱり言いたいことを言えているということの大切さを改めて感じたセッションでした。
ONE JAPANのみなさんもチームをつくって自分の会社をよくしていこうと動いているわけなので、そのみなさんが誰より楽しくやっていくことで、「あのグループに入りたいな」と思って仲間が増えていく。そんな起点になっているんだと思います。仲間が増えれば加速度的に輪が広がっていきますから、まず自分たちが楽しむところからやっていただくのが最高なんじゃないかなと思いました。がんばっていきましょう。
塩瀬:去年9月に京大のデザインスクールで、「ポストコロナ・アフターコロナに何をするか」っていうワークショップがいっぱい開かれていたんです。僕はまだポストコロナの話も早いと思ったので、「沈思黙考」という四字熟語だけを考える3時間、というワークショップをやっていたんですね。
まずは上の2文字、「沈思」、<沈む><思う>ってどういうことだろうと1時間半考えて、そのあとは「黙考」、<黙って><考える>って何だろうと1時間半考えるんです。
この黙って考えるって、わざわざ言葉にしないで、自分の頭の中で考えるということですね。考えた内容を誰か他の人に話すとなると、きちんと定義したり説明したりしないといけないと思ってしまう。けれど、ひとりで考えるだけなら、自分でもまだよくわかっていない言葉を使ってもよいというのが一番の強み。もしそれを組織の中で考えるのだとすれば、一緒に黙考できる仲間同士がつくるチームこそが心理的安全性のあるチームなのかなと思いました。言葉がまだ定義できてないなかでも一緒に考えていける、ちょっとずつ言葉の外堀を埋めていける関係。最近はすぐに「それってどういう意味なの?」とか「このエビデンスを出せ」とかって聞かれるので、最初に行き詰まってしまって話せなくなるんじゃないかと思いますが、黙考を一緒にできる人を増やすということが、実はチームづくりの中ですごく大事なんじゃないかなと思いました。