日産マレリ劇場、開幕#3Photo:JJIJI

実は昨年、事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請した自動車部品大手マレリホールディングス(HD)の復活策の一つとして、官民ファンドの産業革新投資機構(JIC)による血税投入が画策されていた。しかしJICは、秋にいったん議論を打ち切りにしている。特集『日産マレリ劇場、開幕』の#3では、JICがマレリHDへの出資を拒否した本当の理由と、JICによるマレリHDへの「血税投入の条件」を明かす。(ダイヤモンド編集部 新井美江子)

水面下でひそかに進められていた
マレリへの血税投入策の行方

 Too big to fail(大き過ぎてつぶせない)――。3月1日に事業再生ADR(裁判外紛争解決手続き)を申請した自動車部品大手マレリホールディングス(HD)は、まさにこの問題を象徴するような大型再生案件である。

 だからこそ昨年時点ですでに、マレリHDに融資する複数の銀行幹部の間では、再建を巡りかんかんがくがくの議論が繰り広げられていた。

 その再建策の一つとして浮上していたのが、官民ファンドである産業革新投資機構(JIC)がマレリHDの資金繰りを支える「JICスポンサー案」だ。

 具体的には、JICが傘下に組成したJIC Private Equity(JIC PE)を通してマレリHDに出資するというもの。ある銀行幹部によれば、JICはマレリHDのデューデリジェンス(投資先企業に対して行う、資産の収益性やリスクなどの適正評価手続き)にまで着手していたという。

 ところが昨秋、JICはマレリHDへの出資議論をいったん打ち切った。JICスポンサー案は、「経済産業省から実現せよとの“圧力”も相当大きかった」(金融機関関係者)というのに、だ。

 JICはいったい、なぜ出資を拒否したのか。次ページでは、その本当の理由を明かすとともに、今後JICがマレリHDへ血税を投入する際に不可欠な「二つの条件」を提示する。