みずほ 退場宣告#2Photo:Howard Kingsnorth/gettyimages

システム障害を受けて、みずほフィナンシャルグループの坂井辰史社長が引責辞任の意向を表明した。会長とみずほ銀行頭取も同時に退任となるが、後任が決まっているのは頭取のみだ。待ち受けるのは、外部人材の登用か、それとも若手幹部の抜てきか。特集『みずほ 退場宣告』(全8回)の#2では、首脳人事の行方を追った。(ダイヤモンド編集部 田上貴大)

院政へのこだわりで金融庁がみずほに激怒か
坂井辰史社長をはじめ3首脳が総退陣

「なぜ院政にこだわろうとしたのか」

 ある金融庁関係者は、憤まんやる方ない気持ちを隠さない。11月26日に辞任の意向を発表したみずほフィナンシャルグループ(FG)の坂井辰史社長は、8月と9月に起きたシステム障害を受けて「けじめをつける」(坂井氏)と明言していた。にもかかわらず、潔く退任するのではなく、会長職に残ることに強いこだわりを示していたというのだ。

 坂井氏は2018年4月にFG社長に就任し、19年には5年に及ぶ経営計画を打ち出して次世代金融への転換を標語に掲げた。道半ばの降板に責任を感じていたのだろうか。いずれにしても、金融システムの信頼を揺るがす事態を起こしたにもかかわらずポストにこだわる姿勢は、金融庁の「ひんしゅくを買った」(前出の関係者)という。

 だが、坂井氏の退任は「身から出たさび」によって避けられなくなった。11月26日、みずほは金融庁による業務改善命令で経営陣の責任の重大さを追及されただけではなく、財務省からも厳罰を下されてしまったからだ。9月末のシステム障害時に、マネーロンダリング(資金洗浄)防止のために求められる送金時の確認を怠ったことが原因である。外為法違反となったこの事案が、坂井氏に“院政”を断念させる直接的なきっかけとなったようだ。

 経営責任の明確化――。そのためにみずほが導いた解は、FG社長の坂井氏だけではなく、佐藤康博・FG会長と藤原弘治・みずほ銀行頭取の3首脳を総退陣させることだった。

 すでにみずほは、社外取締役で構成される指名委員会によって、3首脳の後任人事を検討し始めている。現段階で決まっているのは、副頭取の加藤勝彦氏を藤原氏の後任に昇格させる人事のみだ。

 果たして、みずほの次期リーダーはどんな人材になるのか。みずほが置かれた状況を整理すると、「ポスト坂井」に求められる三つの最低条件が浮かび上がってきた。

 次ページから、ダイヤモンド編集部が作成したトップ候補の実名リストを提示するとともに、ポスト坂井体制の行方を占う。