ゾロアスター教の違い

 ゾロアスター教では時間は一直線であり、誕生から死へと向かう。

 始まりがあり、終わりがある。

 はじまりが天地創造で終わりが最後の審判でした。

 そして正しく生きてきた人は、最後の審判で救われて天国に行けると、ゾロアスターは説きました。

 ぐるぐる回転する輪廻転生のサイクルで苦しんでいる人々は、どうすれば救われるのか。

 当時のインドでは、次のように信じられていました。現世は苦しくてもまじめに正しく生きていれば、次に生まれてくるときはクシャトリヤになっているかもしれない。悪いことをしていると、来世ではゴキブリに生まれてくるかもしれない。だから善行を積んで生きなさい。よい来世がきっとくる。その教えを信じることで、心に安らぎを得て、インドの庶民は生活していました。いわば、輪廻転生がカースト制を支えていたのです。

 しかし冷静に考えてみれば、果たして次の人生でクシャトリヤに生まれ変われるのか。それはまさに神のみぞ知ることです。

 かといって、虫ケラに生まれ変わるかもしれない恐怖におびえながら死んでいくのも、たいへんです。

 しかも、そのような生と死の苦しみを体験しながら、それが永遠に回るメリーゴーランドのように繰り返されるなんて、めちゃくちゃ疲れるじゃないか。
それはいやだ。

 この苦しみの輪廻転生のサイクルから脱(ぬ)け出すことはできないのか。

 このような疑問を感じ始めたのは、少し生活に余裕がある知識階級が中心だったことでしょう。

 日々の生活に精一杯の人たちには、輪廻からの解脱など考える余裕もありませんでした。