ジャイナ教が大切にしたこと
一方、マハーヴィーラの始めたジャイナ教は、苦行と瞑想に重点を置いていました。
最も強調した教えは、アヒンサー(不殺生)でした。
そのことは徹底しており、植物も動物も食べない断食による餓死さえも、否定しませんでした。
マハートマー(偉大な魂)と呼ばれた政治家、インド独立の父ガンディーはジャイナ教に強い影響を受けていたといわれています。
なおマハーヴィーラは大勇という意味の尊称で、本名はヴァルダマーナといいます。
また彼はジナ(勝者)という尊称も持ち、これがジャイナ教という名前の由来となっています。
ジャイナ教は主として商人階級に広まり、今日でも西インドを中心に550万人ほどの信者がいます。
ブッダとマハーヴィーラのおすすめ書籍
最後にブッダについて深く知りたい皆さんには、並川孝儀『スッタニパータ──仏教最古の世界』(書物誕生あたらしい古典入門シリーズ、岩波書店)、『ブッダの真理のことば・感興のことば』(中村元訳、岩波文庫)をお薦めします。
なお『真理のことば(ダンマパダ)』、『感興のことば(ウダーナヴァルガ)』は、仏教の経典(教典)ではなく、生前のブッダの言葉を記憶を辿(たど)って再現し、書き表した2冊の書物の名前です。
お経(経典)ではありませんが、生きることについての、深い示唆(しさ)に富んでいて、特に『ダンマパダ』は世界的に愛読されています。
ブッダ自身の著書は何も残っていません。
けれど、彼の死後、仏教教団は彼の教えや言動を集めて、教団の統一を維持しようとしました。
この行動を「仏典結集(ぶってんけつじゅう)」または「合誦(ごうじゅ)」と呼んでいます。
第1回の「仏典結集」はブッダの死後、それほど時間を置かずして開かれました。『ダンマパダ』は、このときに原型がつくられたのかもしれません。
またマハーヴィーラについても、彼の著作は残っていません。深く学びたい皆さんには、中村元『インド思想史第2版』(岩波書店)をお薦めします。
なお、赤松明彦『インド哲学10講』(岩波新書)も良書です。
この本では、哲学者、宗教家が熱く生きた3000年を出没年つき系図で紹介しました。
僕は系図が大好きなので、「対立」「友人」などの人間関係マップも盛り込んでみたのでぜひご覧いただけたらと思います。
(本原稿は、13万部突破のロングセラー、出口治明著『哲学と宗教全史』からの抜粋です)