ブッダが提示した寛容な答え
彼らの問いにブッダが提示した答えは、次のような過程を経て生まれました。
多くの出家した人々は、生きることの真理を求めて難行苦行に身を投じていました。
古代からインドに伝わる、ヨガなどと呼ばれる宗教的実践方法です。
さらに彼らは現代の禅定(ぜんじょう)につながる宗教的瞑想の境地に入って、深い思考を重ねることにも専心しました。
ブッダも苦行と瞑想を繰り返した後に、輪廻転生の苦しみから脱け出す道を見つけたのです。
それは8つの基本的修行(八正道〈はっしょうどう〉)を実践することです。
正見(しょうけん)・正思惟(しょうしい)・正語(しょうご)・正業(しょうぎょう)・正命(しょうみょう)・正精進(しょうしょうじん)・正念(しょうねん)・正定(しょうじょう)です。
わかりやすく述べれば、正しい見解(けんかい)・決意(けつい)・言葉(ことば)・行為(こうい)・生活(せいかつ)・努力(どりょく)・思念(しねん)・瞑想(めいそう)のことです。
守るべき戒律は守り、正しい生活を送り、正しく考え正しく行動せよ、と諭しているわけです。
決して断食のような苦行を強いているわけではありません。
ブッダは極端な修行の仕方を否定しています。
むしろ、日々の生活の中で正しい行いを持続することの難しさに耐えて、それを実行する強い意志が、人を輪廻転生の苦しみから脱け出せる人格に導くのだと、教えたのです。
ブッダは、バラモン教伝統のアーシュラマ(四住期)、すなわち、学生(がくしょう)期、家住(かじゅう)期(家族のために働く)、林住(りんじゅう)期(森林で修行)、遊行(ゆぎょう)期(住所を持たず乞食(こつじき)遊行)をも特に否定することなく認めていました。
非常に寛容な教えだったのです。