制作前にクライアントとのコンセンサスを明確にする

中村 既成の動画を研修提供会社から購入して配信する場合も、「ご覧になっているあなたのため」というエッセンスを動画の一部に加えるだけで視聴者の姿勢が変わるはずです。冒頭に経営者のメッセージを入れたり、自社に特化した別の動画を見せたり……ひと手間かかりますが、受講者が研修内容を「自分事」にするためには必要でしょう。たとえば、専門家である講師が登場する前に、人事担当者が研修の意図やポイントを説明する――対面研修で行うそうした流れを、オンデマンドの動画でも実現できるといいですね。

 官公庁をはじめ、あらゆる業種業態の企業・団体をクライアントにしているヒューマンセントリックス。クライアントからのリクエストもさまざまに違いない。

中村 クライアントの担当者の中には、「こだわり」が強すぎる方もいます。実は、過剰なこだわりは動画には向いていません。動画には若干の遊び心も必要で、視聴する側は映像表現の細部まで気にしないこともありますので、「一言一句にあまりにもこだわった発信は紙のほうが向いています」と、私はクライアントに伝えます。たとえば、ライブ配信の研修動画なら、講師が言葉を噛んでも問題ありません。オンデマンドの動画は慎重に創られていくのはたしかですが、自分たちのこだわりが強すぎて、発信する内容の許容範囲が狭くなっていないかを振り返ってみるとよいでしょう。

 クライアントのこだわりによって、動画の完成後に「ここを直してほしい」「もっと尺を長くしてほしい」というような難しいオーダーもあるのではないか。

中村 当社では、制作した動画で大きな修正や追加撮影といったリクエストを受けることはほとんどありません。それは、制作に入る前に綿密な打ち合わせを行い、クライアントとのコンセンサスを明確に得ているからです。中途半端な話し合いで動画制作をスタートさせてしまうと、できあがった後に発注元が「こうしたい、ああしたい」となるのは無理もありません。

 一方で、「(動画の)プロジェクトが頓挫しているのですが、ヒューマンセントリックスで何とかなりませんか?」と相談を受けることがあります。動画制作が暗礁に乗り上げているケースです。動画はコンテンツが複雑なので、発注元の企業と受注側の制作会社の最初の話し合いはとても大切なのです。