「常に最悪のことを想定して生きろ」

――お父様の教えとは?

徳井:うちの親父は「常に最悪のことを想定して生きろ」が口癖で。だから、自分で車を運転するようになってからも「急に人が飛び出してくるかもしれない」「鳥が突っ込んでくるかもしれない」と、“こんなことが起きるかもしれない”とリスクをいつも考えて心の準備をするクセがつきました。

 よく残酷なニュースを見聞きして「考えられない!」っていう人がいますが、“人間のすることは想像がつく範囲だよね”って思ったりもします。

 僕が想像する最悪を超える最悪なことって、世の中そうそうないので。

 そう考えると、基本はポジティブなのかもしれないですね。想定した最悪なことが起こらずに今日も1日過ごせてラッキーだなって。

「常に最悪を想定して生きている」。平成ノブシコブシ徳井が語る独特の死生観とは?

――幸せの沸点が低いほど、1日1日をプラスに感じられますね。

徳井:そうなんですよ。だからね「腐り芸人」として共演してきた、インパルスの板倉(俊之)さんやハライチの岩井(勇気)は、いつもすごく怒ってるじゃないですか。「考えられない!」って。

 それって、もともと実力も実績もあって褒められるべきだし、実際に褒められてきた人だからだと思うんです。幸せのラインが高く想定されてる。

 もしかしたら今、僕がこうして取材を受けて仕事が増えてることも、彼らにとっては心穏やかなことじゃないかも。「徳井が売れるなんてありえない」って(笑)。

 でも、いつも最悪を想定している僕としては、生きていればそういうことが起こることもあるでしょうよ、と。「なんであの人が?」って人が億万長者になることだってあるでしょうしね。

――そんな徳井さんから「これは本当にありえない! 考えられない!」と思わずにはいられないシチュエーションとは?

徳井:んー、今こうして取材を受けている最中に、突然鉄球が落ちてくるとか? 毒針が飛んできてプスッて刺さっちゃうとか? それくらいになったら「考えられない」って思うかもしれないですね(笑)。

――たしかに、それは「どうしてそうなった?」な状況ですね(笑)。

徳井:そうなんですよ。そのくらい突拍子もないことじゃないかぎり、だいたいは想定されるんですよね。うまくいっていた人が誰かの恨みを買ってとんでもないことになる話だって、今までもみんな散々聞いてきたじゃないですか。

 僕だって、いつか転落して、人が踏んだパンを食べるような生活になるかもしれない。でも、小1のとき「生きる」って決めてるので、生きなきゃなーと。嫌だなって思いますけどね。「死にてぇ」って思いながら生きるのってつらいんだろうなって。

 でも、「そうなる可能性はいつだってあるんだよなー、あるなー」って覚悟しながら生きてます。(後編に続く)