かつての日本は「テロ国家」という
アメリカの常識

 それがよくわかるのが、2020年1月、イラン革命防衛隊を長年指揮してきたカセム・ソレイマニ司令官をアメリカが「イラク国内だけでも600人以上のアメリカ人を殺害したテロリスト」と断定して殺害した時に、アメリカ国務省高官がメディアに向けて述べた言葉だ。

「1942年にヤマモトを撃墜したようなものだ。まったくもう!我々がこうしたことをする理由をわざわざ説明しなくてはいけないのか」(yahooニュース個人 アメリカ国務省高官、殺害したイランのソレイマニ司令官を山本五十六元帥に例える 2020年1月5日)

 ここででてくる「ヤマモト」とは山本五十六。言わずと知れた、真珠湾攻撃作戦を発案した帝国海軍連合艦隊司令長官である。つまり、アメリカ政府の中では、真珠湾攻撃を仕掛けた当時の日本は、今で言うところの「テロ国家」という認識でコンセンサスがとれているのだ。

 これは今に始まったことではない。

 アメリカの教育現場では、真珠湾攻撃は民間人68人が命を奪われた、卑劣な奇襲攻撃として教えられる。2007年には、ブッシュ大統領(当時)も国内で演説中、米軍のイラク駐留を継続させる理由を述べる際、アルカイダの同時多発テロ事件と真珠湾攻撃を重ねる発言をしている。

 もちろん、我々が日本にいるアメリカ人に対して、「広島と長崎でどれだけの民間人を殺したかわかっているのか!慰霊碑に行って謝罪しろ!」なんてことを言わないように、アメリカ政府も同盟国の日本を前にして、「昔は卑劣なテロリストでしたね」なんて失礼なことは言わない。しかし、それはあくまで外交上の建前であって、国内でのぶっちゃけトークや、自国民のナショナリズムを鼓舞するような演説の場においては、「真珠湾攻撃=テロ」「中国大陸進出=侵略」というのは、アメリカ人の常識なのだ。