欧州でも「カミカゼ」に対する強烈な恐怖
海外から見える日本の姿

 このような認識は欧州もそれほど変わらない。

 2016年に、フランスやベルギーでイスラム原理主義者による自爆テロをメディアも政治家もごく自然に「カミカゼ」と呼んでいる。それ以前にもスペインでバスク地方の分離独立を目指すテロリストがそのように呼ばれていたケースもある。

 日本のマスコミは、「『死を恐れない決行者』として拡大解釈された格好だ」(産経ニュース2016年8月3日)などと、日本語が欧州に間違った形で伝わってしまった「誤訳」だとかなりご都合主義的な解釈をしているが、それはさすがに無理がある。

 太平洋戦争時、日本の神風特攻隊や万歳突撃は連合国側に、理解不能な自爆テロとして強烈な恐怖を植え付けて、その衝撃は西側諸国を中心とした戦後の国際社会でも広がった。筆者も若い頃、中東を貧乏旅行した時、行く先々で神風特攻について根掘り葉掘り尋ねられた記憶がある。

 我々からすれば、非常に不本意な評価だが、西側諸国の価値観からすれば、日本は狂気を感じさせるような奇襲や自爆で、国際社会に立ち向かった「テロリスト国家」から、西側諸国の支えで心を入れ直し、“仲間に入れてもらった国”という位置付けなのだ。

 そのような意味では、NATO(北大西洋条約機構)加盟を切望して西側諸国の仲間入りを果たしたいゼレンスキー大統領が、アメリカの議会で「真珠湾攻撃」をディスるのは当然である。あの表現は「私は西側諸国のみなさんと全く同じ価値観ですよ」ということを国際社会に示す“踏み絵”のようなものと思っていいかもしれない。