印象戦略コンサルタントとして多くの経営者や政治家をクライアントに持つ乳原佳代氏は、初の著書『学校でも会社でも教えてくれない「見た目」の教科書』の中で、「本書で言う『見た目』とは、その人が元来持つ容姿を指すのではなく、相手があなたにそのときどきで抱く『こういう人であってほしい』という印象のこと。信頼できる人、親しみやすい人、知的な人…それぞれのビジネスシーンで相手があなたに求める印象を戦略的に作り上げることは、もはやビジネスの重要なテクニックである」と言います。プレゼンや営業のみならず、就職や転職の面接でも役立つ「印象戦略」のテクニックとは?
ドアを開けた瞬間に面接官の心を鷲掴みにする
初めて訪れるクライアント先で「信頼できる新担当」だと思ってもらう。プレゼンで「プロジェクトを任せられる、信用できるリーダー」だという印象を持ってもらう。これらはすべて「印象戦略」のテクニックで作り上げることが可能です。
そして、これは就職活動の面接でも同じです。ドアをノックして部屋に入った瞬間から、面接官はあなたがどんな人物かを注意深く観察しています。「なんだか、スーツもシャツの首回りもダボダボじゃないか!」「ネクタイもゆるゆるだなぁ、なんだか軽そうだぞ」――。そんな印象を与えるようでは、この面接を成功させるのは難しいでしょう。
面接官が求めているのは、「信頼がおけて、やる気にあふれた能力のある人物」です。「この人を育てたい、これから一緒に働きたい」と思ってもらえるような第一印象が何よりも重要です。
面接室のドアを開けた瞬間に、明るい表情、背筋の伸びた姿勢、ハリのある声、そしてフレッシュなイメージの清潔感あふれるスーツ姿の青年が立っていたら? 面接官は、「感じのいい、さわやかで好感の持てる青年」という第一印象からあなたの話を積極的に聞こうとするのではないでしょうか。
歩き方にも印象が表れます。
以前、私が行政主催の就活セミナーで講師を務めたときのことです。3名同室の模擬面接を行ったのですが、入室してきた時点ですでに1人の学生の印象が際立っており、その学生が何を話すのかとても興味がわきました。
あとで動画を見直してその理由がわかりました。彼がドアを開けて、椅子の前まで歩く姿がとても堂々としていたのです。短い距離ではあるものの、背筋を伸ばして歩幅を大きくして歩く姿は、他の2人とは一線を画していました。海上保安庁志望の彼が、見事合格したのは納得の結果です。
このようにあなたの評価は、プレゼンを始める前、面接を始める前からすでに決まっているといえます。これは人に会う、あらゆる機会において同様なのです。