ところが、すでにサプライチェーンには先行する事業者がいます。すると先行プレーヤーの中には、サプライチェーン上で事業者の手を経ずに、ブロックチェーンによってトレーサビリティーが確保できるようになることを嫌がる人たちもいるわけです。となると、既存の確固たるサプライチェーンが出来上がっているところにブロックチェーン技術を取り入れようとしても、簡単にはうまくいかない可能性があります。
ですから、ブロックチェーン技術の活用でトレーサビリティーを確保しようと考えるのは、今までサプライチェーン自体が成り立っていない業界や、トレーサビリティーがないことが課題となっている業界になるでしょう。既得権益がありつつも、それで問題なく動いているような社会においては、「ブロックチェーンがなければダメ」「Web3でなければダメ」という状態へ持っていくのには、それ相応のパワーと理由が必要なのではないかと考えます。
インフラが未整備な地域で、新しいサービスが先進国の技術発展を超えて急激に広まる「リープフロッグ」と呼ばれる現象があります。たとえば、有線電話網が未整備だった地域で携帯電話網が先進国より高い普及率で一気に広がるといったケースです。ブロックチェーン技術、NFTなどのWeb3のサービスも、通貨基盤やサプライチェーンが構築し切れていない国や地域で先に広まっていくという可能性は十分あると思います。
GAFAではない民主的プレーヤー
による擬似的な非中央集権化
Web3が目指す非中央集権化についても、もう少し踏み込んで考えてみましょう。現状ではこの「非中央集権化」という言葉が2つの意味で語られているように思います。
1つは、技術的に実現する、仕組みとしての非中央集権化。“真の非中央集権化”が実現できるか否かで言えば、私は技術的には可能と考えています。