アナログ作品でも、ゴッホの『ひまわり』にせよ、モネの『睡蓮』にせよ、美術館でオリジナルを見てきれいだと思うことはあっても、よほど興味がある人でなければ作品の小さなレプリカを家の壁に貼っておくぐらいで十分と感じるでしょう。何世紀にもわたり、音楽や絵画などの芸術家へのインセンティブは、パトロンによるサポートのようなかたちでしか表れないことがほとんどだったはずです。

 翻って現代のNFTマーケットプレイス「オープンシー(Opensea)」などには数多くのデジタル作品がありますが、そこに強烈な支持があるのかと言われれば疑問です。どう考えても、それらの作品が今のようにあまりに高価格で取引されている状態は、やはり異常と言わざるを得ません。

 一方、NFTの技術が確実に使えるだろうと考えられるのが、リアルビジネスとの連携が取れる場合です。これには、米国のプロバスケットリーグ・NBAやスポーツアパレルブランドのNIKE、日本のメルカリとパ・リーグ6球団などによるNFT事業が該当します。そこにはパトロンとしてのコアなファンの存在があり、ファンにリアルでの体験や限定グッズで付加価値を与えるものとして、NFTの存在意義があります。

 この「コアなファン」というのは非常に重要なポイントです。アイドルグループのいわゆる“握手会”や“総選挙”のようなイベントへの参加も、NFTを利用すれば今までよりスマートなかたちで実現できると考えれば、明らかにNFTとファンビジネスとの相性は良いといえるでしょう。

 NFTの将来性は、そうしたコアなファンと結び付くようなニーズを、いかに発掘できるかにかかっているのではないかと思います。残念ながら目下のところは、Web3にせよ、NFTにせよ、投機的な金もうけのイメージが前面に出すぎているがゆえに一般人が近寄りがたく、結果として損をしている部分があるのではないかと、少しもったいなく感じます。

現行プレーヤーとの折り合いが
期待される「リープフロッグ」

 ブロックチェーンの長所のひとつに「トレーサビリティー」、つまり取引の経路が最初から最後まで追跡可能という点があります。トレーサビリティーが最も必要とされる場として、サプライチェーンが挙げられます。