また、これに関して別の問題点として、先に触れた実際に貸し付けを行う指定金融機関となり得る者に、わが国の銀行法に基づく銀行業の免許を得ている外国銀行支店は含まれるのだろうか。含まれるのだとしたら、経済安全保障に穴を開けるようなものなのではないか。

 安定供給確保支援法人についても、外国勢力と何らかの関係があるか否かをしっかりと確認するのだろうか。外国人役職員の有無、外国との交流等の関係性など、厳格・厳密に審査しなければ、経済安全保障との関係において「ザル規定」になるのではないか。

 特定社会基盤役務に関しても、導入や維持管理の委託について事前の計画の届出・審査が規定されている。コンセッションはこの対象に入って当然だと考えられるが、まさか適用除外などとはいうまい。その場合であって、導入・維持管理の委託先に外資系企業(外国企業が資本関係において支配的である企業のみならず、外国企業の指示や指導を受けて事業を行う企業を含む)が入っている(実際に業務を行う場合のみならず、特定目的会社などに出資している場合も含む)場合は、どう取り扱うつもりなのだろうか。水道や空港では既に外資系企業も加わってコンセッションが導入されているが。

 その他、法案第7条などに規定されている「~外部に過度に依存し、又は依存するおそれがある場合において、外部から行われる行為により国家及び国民の安全を損なう事態を未然に防止するため」に関し、「外部」とは単に国の外部ということなのか、外国を意味するのか、外国企業を意味するのか、全く不明である。のみならず、例えば、法案第52条第2項第2号ハに規定する特定妨害行為に関し、「我が国の外部から行われる特定社会基盤役務の安定的な提供を妨害する行為」とあるが、「我が国の外部から」だけでよく、国内にいる外国勢力などからそのような行為が行われた場合は含まれないのか不明である。含まれないのであれば、これまた「ザル規定」である。

 そもそも、この法案には、多くの独自の用語が規定されているにもかかわらず、他の法律であれば当然に設けられている(多くの場合は第2条において)定義に関する条文がない。

 また、それとは少々毛色の違う話ではあるが、第5条に「この法律の規定による規制措置の実施に当たっての留意事項」にとして、規制措置は「安全保障を確保するために合理的に必要と認められる限度において行わなければならない」としているが、経済安全保障という非常時対応のための法案にもかかわらず、規制を最小限にと規定するとは、やはり安全保障についての緊張感のかけらもない、万年平時の法案ということの証左のようである。

経済安全保障を担保したいなら
国が前面に出て役割を果たすべき

 細かい問題点を指摘していけば、枚挙にいとまがないぐらいであるが、真にわが国の経済安全保障を担保する法制としたいのであれば、国内製造・国内調達やインフラ管理運営の自前主義を前提として、国が前面に出てそれに必要な財政支出と強い規制によってその役割を果たすことが必須である。

 国際情勢の複雑化などを本法案の目的とするのであれば、いい加減、経済における平和ボケやグローバル化幻想からも目を覚ます必要があるのではないか。