部下のことを知ろうという姿勢が、1on1を実りあるものに変える

 コロナ禍の現状で、同社のリモートワーク比率は約70%。会社で上司と部下が顔を合わせる機会が減ったことは、双方に気持ちの揺れを生んでいます。

「1on1の実施率は、緩やかにですが上がっています。一人で黙々と仕事をしていることに不安を感じる人も多いのでしょう。1on1もリモートで行われるケースが多いのですが、中には“週に1回は顔を合わせよう”と呼びかけるなど、コロナの状況にも応じてやり方を工夫するマネジャーもいます」(大場さん)

 リモートでの1on1で最近よく聞くのは、ビデオをオンにして対話することに抵抗感を持つメンバーが少なくない、ということです。声だけとなると、相手の体調などを判断することは難しいのですが、ビデオをオンにすることを推奨はできても強制するのは難しい。状況に応じてリモートと対面とを組み合わせることは、お勧めしたいやり方です。

 講師の立場でみなさんの話をうかがうと、部下が自分からいろいろな話をしてくれるようになった、という方も少なくありません。それは研修によって聴き方、関わり方が変わった、ということにほかなりません。以前は、「業務で困ったこと」を聞くようにしていたのが、研修を受けてからは、「成長できたこと、足りないこと」を聞くようになった、というマネジャーの方もいます。

「この1年でだいぶ意識が変わって、部下のことを知ろうという姿勢のマネジャーが増えてきたと感じます」(大場さん)

 人事を管掌する岩尾修一取締役は、「会社側の方針も戦略志向に振っていて、この研修もその一環だと考えています」と言います。

「戦略があって戦術がある、とステップを踏んでマネジメントする、ということを目指しています。そのため、これからのマネジャーに望むのは、なるべく長期的な視点を持ってもらうことです。目の前の業務課題の確認から、時間軸を前に伸ばしていってほしいと考えています」