コロナ禍でリモートワークが定着し、上司/部下と顔を合わせることがなくなった、という方は多いだろう。1on1をしていたとしても、2週間に1度オンラインで顔を合わせるだけではとても意思疎通できるものではない、という声は実際に多く聞かれる。しかし、果たして本当にそうだろうか。100社に1on1を導入してきた由井俊哉氏の著書『部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術』で紹介されている外資系製薬会社MSD株式会社のケースは、上司と部下とが日常的に顔を合わせなくなった状況でも、1on1の活用でコミュニケーションの質・量を上げられることを証明している。同社の上司/部下双方へのインタビューから、その実態と1on1活用法を見ていこう。(構成/間杉俊彦)
部下の顔が見えにくい時代に、1on1は本当に効果があるのか?
コロナ禍でリモートワークが定着し、上司が部下と顔を合わせる機会は大きく減っています。先般、NTTが転勤・単身赴任廃止の検討を発表したように、ウィズコロナの世界でも基本的にリモートワークが続いていくでしょう。
その際、大きな問題となるのが、コミュニケーションです。顔をほとんど合わせることがないまま、部下といかに意思疎通を図り、マネジメントしていくのか。そう悩んだ企業の多くが、上司と部下が定期的に顔を合わせる機会をつくる最適なツールである1on1の導入を決めていますが、戦術なきまま導入されているところが多いと言わざるを得ません。結果、第1回でも述べたとおり、効果を感じた企業と、やったけど成果がなかったと諦める企業の二極化が進んでいます。
私のもとにも、数多くの相談が寄せられますが、今増えているのが、「リモートワーク下で、いかにして上司と部下のコミュニケーションを活発化するか。1on1に、それができるのか」というものです。
結論から申し上げると、できます。そして、そのことを証明してくれているのが、世界有数のグローバル製薬会社、MSD株式会社です。同社は、アジャイル型組織に移行した際、人事上の部下の日常での仕事ぶりを、どのように把握すればできるのかという新たな問いに直面しました。「顔の見えない部下のマネジメント」という課題、それはリモート環境でのマネジメントに悩む人と相似形を成す課題です。これを1on1で乗り越えたMSDには、学ぶべき教訓が数多くあります。