「エンゲージメントの高い部下の上司」の特性とは?

 1on1は、従業員のエンゲージメント(本研究では「企業と従業員との信頼関係」と定義)を高める。このことを日清食品では、調査研究によっても実証しました。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科との共同研究によるものです。

「当社でも在宅勤務の比率が高くなり、コミュニケーションの方法も大きく変化する中、課題があると感じていました。そこで、チームマネジメントの成功事例やノウハウを抽出し、可視化したいと考えたのです」。人事部の牛島展子さんは背景について、こう説明します。

 調査手法の詳細については省きますが、結果として「エンゲージメントの高い従業員は、上司と頻繁に1対1のコミュニケーションを取ることができる関係性を築いており、主体的に業務に取り組むことができ、そのうえ困難な場面においては、上司からのフォローを適切に受けている」ということがわかりました。

 調査結果によれば、エンゲージメントの高い部下の上司には、次のような特性が見られたといいます。

・日常的に話しかけてくれ、部下からも話しかけやすく、チャットでも質問ができる
・判断のスピードが早く、部下に役割を委任してくれるため、部下が主体的に動ける
・チームに安全安心の場が構築されている。オンラインのコミュニケーションツール上でのやり取りが活発で、チームミーティングでも褒め合う雰囲気がある
・上司の上司ともコミュニケーションが取れている

 エンゲージメントが低い部下の上司の特性は、言うまでもなく、これらと逆である、ということになります。

 この結果を受けて、同社では、さらに1on1をはじめとする人事施策を進めていくことにしているとのこと。上司側、部下側双方に対話しやすくなるようサポートをしつつ、タテ、ヨコ、ナナメの豊かな関係性を背景に、個々の学びと成長を促す。日清食品ホールディングスの取り組みからは、1on1と「組織開発」の理想的な関係を見て取ることができます。