1日2日休んでもゼロにはならない
新しい習慣を形成しようとしている人にとって、この実験からのいちばんの朗報は、新たに始めた行動を1日や2日やり損ねてもかまわない点だろう。参加した学生たちによると、休んだのちに最初にその行動をとったときの自動で行う感覚は、休む前に最後に行ったときとほとんど変わらなかったという。たまにやらないことがあっても、生まれつつある習慣は消えなかったのだ。
これはとても重要なポイントだ。1日や2日やり忘れても、ゼロには戻らない。怠惰や失敗の連続が許されるわけではないが、形成途中の習慣は、完璧を必要とするほど脆くない。習慣の形成には、継続と繰り返し、状況を賢く操るテクニックが必要となる。1日やり忘れた、禁を破ってしまったということがあっても、絶望しないでほしい。むしろ、自分が置かれている状況の整理や強化、明確化をする機会に活用しよう。習慣の形成はまだ続いているのだから。
習慣にしたい行動によって必要日数は異なる
実験の習慣形成に関する部分に目を移すと、自動的になるまでに繰り返す必要のある回数は行動によって異なると判明した。身体にいいものを食べることを習慣にするには、ほぼ考えずにそうできるようになるまで65日ほど繰り返す必要があった。身体にいいものを飲む習慣については少々短くなり、約59日かかった。だが運動は反対に、91日ほど繰り返さないと習慣と呼べるようにはならなかった。
ほかの行動に比べて習慣になるまで時間がかかる行動があるというのは、ある意味当然だと言える。ピアノを習えば、ショパンの協奏曲を弾けるようになるには、「きらきら星」より多くの練習が必要になると思うはずだ。
シンプルな行動は、複雑な行動より早く身につく。「ジムへ出向き、トレーニングをする」といった複数の要素を伴う行動は、習慣にとってはとりわけ覚えづらいのかもしれない。自動的にやっているという「実感」に学生たちがつけた点数はあくまでも、習慣はいつ形成されるのかという問いに対する答えのひとつにすぎない。
平均すると、身体にいいことを自動で行っていると実感できるようになったのは、66日繰り返したあとだった。新しい行動に取り組み始めたら、それを2ヵ月と1週間繰り返す。そうすれば、自動的に行う感覚は大幅に高まる。
【本記事は『やり抜く自分に変わる超習慣力 悪習を断ち切り、良い習慣を身につける科学的メソッド』(ウェンディ・ウッド著、花塚恵訳)を抜粋、編集して掲載しています】