完全栄養食の普及に
立ちふさがる三つの障壁

 コンビニで手軽に購入でき、主食として扱われる商品が登場したとはいえ、「今後さらに完全栄養食が浸透するには大きく三つの障壁がある」と田中氏は言う。

「まずは味です。従来の完全栄養食の『味が不安』というイメージを払拭(ふっしょく)するためには、おいしさの設計が鍵となります。2020年12月には、ベースフードと味の素の協業が発表されましたが、このような完全栄養食を標榜する企業とおいしさを追求する企業とのつながりがいかに増えていくかが重要。完全栄養食だからといって妥協せずに、『おいしいけれど健康』と、日々の食卓になじんでいくのが理想です」(田中氏)

 二つ目は価格だ。冒頭で触れたベースブレッドは、コンビニで購入すると、一つ250円前後。だが、すぐ下の段に100円台のコンビニパンが並んでいるのを見れば、どうしても完全栄養食はお高い印象になってしまう。

「現状では、通常の総菜パンと比べると、やはり値段は高くなってしまいます。ただ、これは時間が解決する問題。完全栄養食の出荷量が増加すれば、生産コストなども自然と下がっていくでしょう。そのためにもまずは、完全栄養食への需要を喚起していく必要があります」(田中氏)

 いずれは、健康意識が高いわけではない人でも、買いやすい価格になっていくのかもしれない。

「最後は、いかにして消費者との接点を増やしていくかです。現状、完全栄養食はオンライン販売がメインです。コンビニ以外でも、社食やレストラン、スーパーの総菜コーナーのメニューに完全栄養食を取り入れるなどの取り組みが必要でしょう」(田中氏)

 これら三つの障壁をクリアすることで、「最終的には『完全栄養食だから選ぶ』ではなく、『食べているものが自然に完全栄養食になっていく』ことを目指したい」と田中氏は言う。