完全栄養食の
ネーミングの重要性

 前述の三つのポイントに加え、完全栄養食が普及するためには、商品のネーミングも重要だと言う。

「これまでの『完全栄養食=意識高い系』という印象を払拭し、日々の食事に溶け込むようなネーミングが重要になります。たとえば、煮物に入っている“がんもどき”は、もとは肉の代替品として豆腐をすりつぶして揚げたものですが、『代替肉』だと意識して食べる人はあまりいないですよね。このように、『完全栄養食』と意識しないネーミングにする意識も必要です」(田中氏)

 こうしたいくつかの障壁をクリアできれば、完全栄養食がより我々の食生活になじむ可能性は十分あるという。さらに田中氏は、これからの完全栄養食の普及の鍵を握る“ある層”がいると指摘する。

「シグマクシスの調査では、毎日の食事に無関心な人が3~4割いることが分かっています。コロナ禍で健康意識が高まる中、こうした人たちの需要を取り込むことができれば、完全栄養食の普及は一気に進むのではないでしょうか。食事の改善で生活習慣病などになる人が減れば、それは国の医療費負担の軽減にもつながりますので、社会的な意義も大きい取り組みだと思います」(田中氏)

 完全栄養食はまだ萌芽期ではあるものの、今後、人々の食生活への浸透が進むにつれ、社会問題すら解決する希望を秘めているようだ。