パーパス・ドリブンを人事の文脈で捉えると……
ある民間企業による、2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象にした調査では、就職活動でパーパスを大事にする学生が約8割にのぼるという結果が出た*1 。SDGsの17の目標などを身近に感じて育った世代にとって、企業の社会的な価値であるパーパスの重要度は高いと言えるだろう。こうした背景を受けて、今後はパーパス・ドリブンな採用がいっそう求められると後藤さんは語る。
*1 株式会社学情による「2023年3月卒業(修了)予定の大学生・大学院生を対象にした就職活動に関するインターネットアンケート結果」より(調査期間:2021年12月6日~2021年12月10日/有効回答数:462名)
後藤 社員をスキルや実績などで採用することも重要です。しかし、これまでお伝えしてきたとおり、パーパスが一致していることで、社員のエンゲージメントが高まったり、自律型人材へと成長しやすくなったりします。また、「(私は)自分の人生の目的を見つけている」と「会社のスタンスに共感している」の一致度が高い人の中には、ハイパフォーマーも多いことも分かっています*2 。
このことから、採用では「自社のパーパスのどの点に共鳴していますか?」といった質問を盛り込めるとよいでしょう。なお、パーパスに関する質問をするからには、面接官側もパーパスに共鳴・実装し、自分の言葉で語れるようになっていなければいけません。つまり、パーパス・ドリブンな組織を作る機会として、採用活動を活用していくことも重要になるのです。
*2 アイディール・リーダーズ株式会社によるクライアント企業への調査結果から
一方で、「自分のパーパス」と「会社のパーパス」とが重なり合わなくなったら転職のタイミングであると言えるのかもしれない。パーパスは不動のものではなく、変容していくもの。個人のパーパスの変化にあわせて仕事を変えていくことは当然のことだとも言える。
ただ、自分のパーパスがない場合には共鳴のしようがないだろう。自分のパーパスを見つけるために、「世界を変える力があるとしたら、どんな世界をつくりたいか?」といった自分自身のパーパスを問い続ける質問を自分自身に繰り返していくことが重要だ。「私は何のために存在しているのか?」ということの答えを見つけられれば、会社のパーパスとの重なり合いを見つけ出すこともできるはずだ。
後藤 「自分のパーパス」と「会社のパーパス」とが共鳴する施策として、入社後の研修でパーパスを伝え、考える機会を作ることが大事です。さらには、1on1などでパーパスの振り返りをする機会を設ける方法もあります。
また、パーパスに基づいた福利厚生や休暇をデザインすることも重要でしょう。例えば、社会貢献をパーパスで掲げているのであれば、ボランティア休暇制度を整えておくといった具体化が重要です。他にもパーパスの人事制度への落とし込み方は多様にあるでしょう。
パーパス・ドリブンな組織が増えていくことで、社会も、そして個人も、より幸福に暮らしていけると後藤さんは考えている。
後藤 社会に貢献する企業が増え、社員も自分の仕事がどう社会につながっているのかを意識できれば、一人ひとりのwell-beingにもつながっていくと考えています。