パーパス・ドリブンな経営を行なうメリットを考える

 パーパスはキャッチコピーのように掲げて終わりではない。大事なことは、策定することではなく、組織のメンバーから共鳴され、ビジネスに実装されることだ。いわゆる、パーパス・ドリブンな組織となることが重要だと言える。では、パーパス・ドリブンな組織とは具体的にどういった状態を指すのだろう。

後藤 パーパス・ドリブンな組織となることでパーパスを起点としてイノベーティブで一貫した戦略立案や意思決定、社内向けの施策を行なっていくことができます。比較としてパーパス・ドリブンではない企業とは何かを考えてみましょう。各事業がバラバラな方向を向いて、時には「事業部長ドリブン」「顧客ドリブン」のようなこともあります。また、人事や総務などにまで浸透していないケースもあるのです。

 パーパス・ドリブンな組織がもたらす効果は、大きく、7つ挙げられる。

(1)パーパスに共鳴する人材のエンゲージメント
(2)イノベーションの創出
(3)パーパスに共感するファンの獲得
(4)社会課題面でのインパクト創出
(5)自律型人材の育成
(6)経営に求められる一貫性、スピード感の高まり
(7)多様性をつなげる組織の一体感の醸成(ダイバーシティへの効果)

 また、現在は組織におけるエンゲージメントが大きな課題となっている。コロナ禍となり、オフィスに集まる機会が減ったことで、会社への帰属意識がいっそう薄れた。こうした状況が続けば、労働条件だけで企業が比較され、自社からの離職率が高まっていく可能性がある。これからの時代、社員を束ねていくためには、パーパスの存在が鍵になると言える。

後藤 「会社のパーパス」と「自分のパーパス」が重なり合うことで、「この組織で働きたい」という気持ちが生まれます。実際に当社で実施した調査によると、「会社のパーパスが当社で働く理由になっている」と回答した人は、約80%にものぼっています。

 また、「ダイバーシティの実現」においても同様のことが言えます。多様な人たちが同じ組織で働くには、求心力となりうるパーパスが必要なのです。

 さらに、ここ最近、人事の方から課題として耳にするのが「自律型人材の育成」についてだ。自律型人材とは、自ら考え、判断し、行動して主体的に業務を遂行していける人材のこと。なぜ、自律型人材の育成にはパーパスが効果的だと言えるのだろうか。

後藤 自律型人材に共通するのは、「自分の仕事に意義を見出して、高いモチベーションを持って働いている」ということです。自分の仕事の意義を見出すには、エンゲージメントと同じように「組織のパーパス」と「自分のパーパス」の重なりを見出すことです。そうすると、自身の目前の仕事がパーパスの実現につながっていき、意義を見出すことができるようになるのです。