夏から秋にかけても、22卒生(2022年3月の大学院・学部卒業生)の採用面接が続いている。コロナ禍となり、採用活動はオンライン化が進んだが、面接が対面からオンラインとなったことで、どのような注意が必要となったのか? また、面接以外の採用過程である会社説明会やインターンシップでのオンラインの活用のポイントとは? 書籍『オンライン採用:新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター刊)の著者であるビジネスリサーチラボ代表取締役の伊達洋駆さんに話を聞いた。(構成・文/佐藤 智 レゾンクリエイト)
コロナ禍でオンライン化した面接の注意点とは何か?
採用面接がオンライン化したことで、面接官が候補者(被面接者である学生)から得にくくなった情報を教えてください。
伊達 面接官は、主に候補者の能力と性格の2つを見極めようとしています。そもそも、非日常の面接の中で日常の働きぶりを推し量ろうとすること自体が簡単なことではないのですが、オンライン化すると候補者の性格は、より推し量りにくくなります。
面接に限らず、人は性格の推測を身振り手振りや表情など“非言語的手がかり”から行っています。たとえば、「明るい」「きちんとしている」「一緒に働きやすそう」といった判断は、語っている内容よりも、表情やジェスチャー、声の大きさといった情報から読み取っているのです。
対面からオンラインになることで、この“非言語的手がかり”が少なくなります。対面で接していれば、言葉以外のさまざまな情報を伝えられますが、オンラインでは難しい。性格がいっそう読み取りにくくなるのです。
面接がオンライン化することで、カルチャーフィット(企業文化などに対する従業員・求職者の適応)の見極めにはどのような影響があるでしょうか?
伊達 カルチャーフィットには、次の3種類があります。
(1)一致(supplementary fit)…個人と企業がどの程度一致しているか
(2)N-Sフィット(Need Supply fit)…個人の要求に企業の供給が合っているか
(3)D-Aフィット(Demand-Ability fit)…企業の要求に個人の能力が合っているか
面接がオンライン化することで、企業にとっても、候補者にとっても“非言語的手がかり”が得にくくなるため、「一致(supplementary fit)」の見極めが機能しにくくなります。後述しますが、ここで重要になるのが適性検査の活用です。面接での判断が難しい場合には、他の方法をうまく活用し、設計する視点を持てるとよいでしょう。
N-Sフィットの見極めには、性格ではなく、候補者のニーズを知る必要があります。自分を「よく見せよう」と考える採用の場で、本音でニーズを語る候補者は多くありません。そのため、N-Sフィットを把握することは簡単なことではないのです。
しかし、それでもオンライン面接でN-Sフィットを見極めようとするならば、同じ担当者が候補者に接触する回数を増やして、信頼関係を築くことがポイントとなります。
伊達洋駆 (だて ようく)
株式会社ビジネスリサーチラボ 代表取締役
神戸大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。修士(経営学)。同研究科在籍中、2009年にLLPビジネスリサーチラボを、2011年に株式会社ビジネスリサーチラボを創業。著書に『オンライン採用:新時代と自社にフィットした人材の求め方』(日本能率協会マネジメントセンター)、『人材マネジメント用語図鑑』(共著/ソシム)などがある。